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2019 年度 実施状況報告書

正浸透膜を活用した下水のメタン発酵技術の開発

研究課題

研究課題/領域番号 19K22932
研究機関広島大学

研究代表者

西嶋 渉  広島大学, 環境安全センター, 教授 (20243602)

研究期間 (年度) 2019-06-28 – 2021-03-31
キーワード正浸透膜 / 下水 / メタン発酵
研究実績の概要

下水は、活性汚泥法等の生物処理法を用いて処理される。その処理に我が国の電力消費量の約0.35%のエネルギーが投入され、余剰汚泥として我が国の産業廃棄物の20%が排出されている。その一部はメタン発酵により、エネルギー回収する取り組みが行われているが、下水中の有機汚濁物質をコストをかけて分解した後、二次的に発生した汚泥からエネルギー回収していることになる。そうであれば、下水を直接メタン発酵すればいいわけであるが、メタン発酵は処理速度の問題から下水のような大量の排水処理には向かない、下水のような有機物濃度が低い排水には適用できないという課題がある。そこで本研究では、正浸透膜(FO膜)を使って、下水中の有機物をメタン発酵可能な濃度まで濃縮し、結果としてメタン発酵で処理すべき下水量を大幅に減少させ、直接メタン発酵するための前処理方法について検討する。
下水中有機物の約4割は固形物であり、溶存態有機物の9割程度は1kDa以下の低分子であることがわかった。既存のNF膜、RO膜を用いて海水相当のNaCl水溶液を駆動溶液として、下水の濃縮を試みたところ、NaCl阻止率(文献値)で約60%以上の膜でほぼ100%の下水中有機物の濃縮が可能であることを明らかにした。また、浸透圧のみによる駆動では、十分な処理速度は得られないものの一定の加圧をすることで大きく処理速度が改善されることを見出した。一方、下水濃縮は下水中の無機イオンも同時に濃縮するが、高塩濃度はメタン発酵を阻害する。異なるNaCl阻止率の膜を用いた実験では、NaCl阻止率が低くなるにつれて、一価イオンの透過性が高まり、次に二価イオンの透過性が高まることがわかり、今後一価イオン、二価イオンのメタン発酵阻害の影響を評価し、有機物濃縮、処理速度、無機イオンの透過性のバランスを考慮して下水濃縮に適切な膜を選択し、さらに処理条件について検討していく。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究では、① 下水の濃縮のためのFO操作条件の検討、② 塩素洗浄によるバイオファウリング制御、③ 濃縮下水によるメタン生成と発酵阻害の評価について検討し、下水の直接メタン発酵の可能性について評価することとしている。
これまで、①と③について取り組み、下水濃縮に適用可能な膜の範囲を絞り込み、処理速度を改善するための操作条件について明らかにしている。さらに発酵阻害について検討を進め、有機物濃縮と塩類集積の回避を可能とする操作条件を詰める必要があるが、ここまでは順調に進んでいると判断している。

今後の研究の推進方策

初年度において、下水濃縮に適用可能な膜の選定、操作条件については大まかに絞り込めたことから、2年目はさらに有機物濃縮、無機イオン類の透過性、処理速度のバランスをとった膜選定、操作条件について検討する。ここまでの検討で、下水中の一価イオンと二価イオンの透過性が異なることが明らかとなっていることから、それぞれのイオンのメタン発酵阻害について検討を加え、適切な膜の選定に結び付けていく。
一方、初年度は取り組まなかったバイオファウリングを制御するための洗浄について検討し、時間的な透過流量の低下を抑制する方策について検討する。具体的には、次亜塩素酸ナトリウムによる膜洗浄を検討する。過去の研究から塩素は他のイオンと比較して透過性が高いことがわかっているため、駆動溶液側から供給溶液(下水)側に塩素を浸透させ、膜とファウラントの付着界面に塩素を作用させ、効果的にファウラントを剥離する方法について検討する。

次年度使用額が生じた理由

新型コロナの影響で、年度末に予定していた学会発表のための出張がなくなったこと、3月予定していた実験が計画通り実施できなかったことによる。令和2年度予算と合わせ、「メタン発酵阻害」に関する研究に使用する。メタン発酵実験で必要となる発生したガスを捕集するためのガスパックや分析用のガス等の購入に予算を充てる。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2020

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] 正浸透膜法を用いたエネルギー生産型排水処理システムの開発2020

    • 著者名/発表者名
      内田浩夢、中井智司、橋本くるみ、梅原亮、西嶋渉、大野正貴
    • 学会等名
      日本水環境学会

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公開日: 2021-01-27  

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