研究課題/領域番号 |
19K22933
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
野見山 桂 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 准教授 (30512686)
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研究分担者 |
水川 葉月 愛媛大学, 農学研究科, 准教授 (60612661)
池中 良徳 北海道大学, 獣医学研究院, 准教授 (40543509)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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キーワード | 神経伝達物質 / イオン性環境汚染物質 / 脳 / 分析法開発 / LC-MS/MS |
研究実績の概要 |
脳組織中のモノアミン類・アミノ酸類等の多様な神経伝達物質および代謝産物数十種(目標40種)を標的とし、脳移行に伴う神経伝達物質の変化を包括的に分析できる手法を開発する。高マトリクスな脳試料を対象とするため、メタボロミクス分析の前処理で使用しているジルコニアカラムを用いたリン脂質の除去と固相抽出、および限外ろ過フィルターを使ったタンパク除去等の前処理法を検討し、それらを組み合わせて、高精度なクリーンアップ法を確立する。さらに、定量性・感度に優れたLC-MS/MS (AB SCIEX QTRAP5500)の使用により高感度・高選択性を達成し、ハイスループットかつ定量性を機能化した方法を開発をめざした。 イヌ・ネコ・ラット・鯉の脳組織を対象に抽出溶媒と内部標準物質を添加し、超音波抽出後、遠心分離(15,000×g, 20 min, 4℃)した。得られた上澄みを採取し、アセトニトリル添加によりタンパクを沈殿・除去した後、対象物質をLC (Shimadzu, UFLC XR)-MS/MS (AB Sciex, Qtrap 5500)で定性・定量した。対象物質はDopamineとNorepinephrineを含むチロシン代謝系、Serotoninを含むトリプトファン代謝系およびヒスチジン代謝系に分類される活性体とその前駆体や代謝物の計13種を選定し、本分析法の補正回収率は71-100%、日内変動は<7%、日間変動は<10%と良好な確度・精度を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
脳組織を対象に、神経伝達物質13種のLC-MS/MSの分析法を開発することができた。多様な生物の脳試料を対象に添加回収試験を実施した結果、イヌ・ネコ・ラット・魚(Tilapia)において、補正回収率は70-120%、日内・日間変動はそれぞれ7%, 10%と確度・精度ともに良好であった。これは、環境化学分野でin vivo試験に用いられるほとんどの生物に対する神経伝達系への影響の評価に応用可能であることを示唆する。
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今後の研究の推進方策 |
神経伝達物質濃度に変化の認められた神経伝達物質を対象にMALDI-imaging/Tof-MSを用いて脳内分布の変化を明らかにすることで、イオン性環境汚染物質が神経伝達物質に与える影響について検証する。さらに、イオン性環境汚染物質の脳移行動態を解明するため、血液脳関門の培養細胞を用いたin vitro試験を適用して脳内移行性(血液脳関門透過性)を検定し、血液脳関門の透過係数を明らかにする。これら複数の先端手法を組み合わせ、環境汚染物質による脳への影響を解析する新規手法を開拓する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度は使用するマシンタイムの問題からLC-MS/MSを用いた分析法の開発に集中し、2019年度末に予定されていたMALDI-imaging/MSを用いたラット脳内局在性の解析を2020度に変更したため、本分析に伴う支出の差額が生じている。しかし2カ年で実施予定である研究遂行計画は問題なく進行しており、2019年度に開発した分析法を用いて、本年度はMALDI-imaging/MS分析を予定しており、この分析に必要な誘導体化試薬の購入やマシン使用に伴う消耗品費等への充填が予定されている。また2020年度は血液脳関門透過性試験も予定しているため、分析キットの購入により予定通りの研究費は使用される。
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