研究実績の概要 |
目的: ドーパミン(DA)やセロトニン(5-HT)などの神経伝達物質(NTs)は、行動、記憶、学習などの脳機能を調節している。ネオニコチノイドは、現在使用が拡大している殺虫剤であり、その安全性の高さから全世界で広く使用されている。一方、哺乳類への影響が近年報告されており、特に自発運動の変化や不安様行動の誘発など、NTsとの関連が疑われる症状が認められているが、ネオニコチノイドのNTsに与える影響は明らかになっていない。そこで、本研究では、脳におけるMAの分布と濃度を明らかにするため、質量分析イメージング(MSI)法および液体クロマトグラフィー質量分析法(LC/MS)法による網羅的かつ高感度・高精度な分析法を開発し、ネオニコチノイド投与が脳におけるMAに与える影響を明らかにすることを試みた。 方法: C57BL/6Nマウスにイミダクリプリド(IMI)(0, 10, 50 mg/kg)を経口投与し、1時間後に安楽死を行い、脳(線条体、海馬、小脳、脳幹、皮質、嗅球)を採材した。NTsの分析として、Py -Tag(大陽日酸)による誘導体化を用いたMSIによる網羅的局在解析及びLC/MSを用いた脳の各部位における定量を行った。なお、定量対象のMAは、DA、5-HT、ヒスタミン、3-MTの4種類とした。 結果: IMI投与群において自発運動量の低下が認められた。次に、MSIでMAを含む化合物の網羅的局在解析を実施した結果、自発運動に関与していると言われている線条体に分布するDAを検出でき、投与によってその強度が減少する傾向が見られた。更に、LC/MS定量法を用いて、脳の各部位中のMAを定量した結果、IMI投与によって線条体におけるDA濃度に変化は認められなかったが、嗅球における3-MT、DAの減少、線条体における5-HT、ヒスタミンの減少などが認められた。
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