研究実績の概要 |
ある鉱山の坑廃水組成を模擬した廃水を作製した.円筒容器にヨシまたはガマを植栽した植栽系に加え,非植栽系を作成した.上部から1Lの模擬廃水を流入させ,設定した滞留時間後に処理水を排出し,再び新たな模擬廃水を流入させる連続回分実験を行った.滞留時間は,第Ⅰ期(7回),第II期(9回),第Ⅲ期(26回)は1週間,第Ⅳ期(8回)は2週間,第V期(29回)は3~4日間とした.模擬廃水のMn濃度は,第Ⅰ期は10 mg/L, 第II期は20 mg/L, 第III~V期は66 mg/Lとした.第III期に非植栽系,ヨシ植栽系とガマ植栽系の人工湿地から,黒色の堆積物を取り出し,硫酸マンガンを含む平板培地で微生物を培養した. 第Ⅰ期と第Ⅱ期は,どの人工湿地でもマンガンを排水基準を満たすまで除去できた.非植栽系は第Ⅳ期,第Ⅴ期も安定してマンガンを除去できたことから, 滞留時間は3~4日あれば十分であるが,2週間とした場合はマンガンが再溶出することが示唆された.植栽系でも滞留時間が3~4日間あればマンガンは十分に除去できた.単離したマンガン酸化菌のうち, 非植栽系から分離した1-b株は,Kineosporia属に属する細菌であった.一方,ヨシ植栽系とガマ植栽系から分離した株は,いずれもAscomycetesであり,ヨシ植栽系から分離した3-1, 3-2株はPleosporales目,ガマ植栽系から分離した5-1株はAcremonium属、5-2, 5-3株がDothideomycetidae亜綱に属するものであった.模擬廃水には有機物が含まれていないため, 植物の根分泌有機物によって, 集積されるマンガン酸化菌の種類が影響されると考えられる.単離したマンガン酸化菌は,8日間で100mg/Lのマンガンの40%以上を除去でき, 特にガマ植栽系から分離した5-1株と5-3株の能力が高いことが示された.
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