研究実績の概要 |
化石燃料からプラスチックが製造され 100年が経つ。耐久性のある素材としてガラスや金属が使われてきたが、徐々にプラスチック製品に置き換えられ、過去60 年の間にその生産量が増大、2015年には4億トン/年製造されるまでになった(Treat and Williams 2016)。安価で取り扱いやすいプラスチックは現代の生活の中でいたるところで使われ、我々はその利便性を享受してきた。一方で、適正に処理されなかったプラスチックは太陽光(紫外線)や物理的な力によって粉砕されながら、陸域、河川を経て海洋に流出し、やがては深海にまで到達している (Song et al., 2018 ES&T, online first, Thompson 2015)。環境媒体別にみたマイクロプラスチックの研究は、圧倒的に海域を対象とした例が多く、陸域、特に大気中の調査・研究は限定的である (Zhang Y et.al., 2019, Enyoh CE et al., 2019, Zhang Y., 2020) 。大気汚染による死者数は 700万人/年を越えると報告されており(WHO, 2018)、大気中マイクロプラスチックの存在、拡散、輸送、沈着、残留性有機汚染物質 (POPs)等の吸着を示すことは、その方法論の確立を含めて喫緊の課題である。 本研究の目的は、大気中のマイクロプラスチックの存在の確認およびその定量評価を新規開発した手法を用いて明らかにすることである。 本年度は、大気中のマイクロプラスチックの検出方法の確立を行った。採取容器をガラス等、プラスチック以外の素材を採用(プラスチックフリー)することの検討、採取した試料を観察するための前処理法等について、さらにマイクロプラスチックの大気輸送について検討した。
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