研究課題/領域番号 |
19K22938
|
研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
井口 亮 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 主任研究員 (50547502)
|
研究分担者 |
財津 桂 名古屋大学, 医学系研究科, 准教授 (30700546)
|
研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2021-03-31
|
キーワード | サンゴ / ストレス耐性 / メタボローム / エクスポソーム |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、世界的に衰退しているサンゴ礁生態系の基盤構成種・サンゴを対象に、サンゴ体内外の代謝産物を網羅的に把握し、ストレス耐性を特徴づける要因を浮き彫りにすることである。昨年度は、琉球列島に多く見られる造礁性サンゴの1種、コユビミドリイシを対象に、野外観察(高海水温時の白化の有無)と室内飼育実験(成長量と光合成効率の評価)で絞られた高温ストレス耐性を持つ系統と、ストレス耐性が比較的低い系統のサンプルを用いて、解析を行った。各系統から作成した枝片を用いて、代表的なメタボロームデータの取得をGC/MS/MSによって進めた。メタボロームデータの取得前に、枝片の前処理について詳細に検討し、最適な処理方法を確立した。その結果、200以上のメタボロームデータの取得に成功した。全メタボロームデータを用いてクラスター解析を行った結果、全体としては系統間で差異が見られる傾向が確認された。得られたメタボロームデータを基にVIP値等での絞り込みを進めた結果、タガトースやグルカル酸など、系統間で顕著に異なる29のメタボロームの絞り込みに成功した。親サンゴで得られたメタボロームデータがサンゴホスト由来か、共生微生物由来かを明らかにするために、初夏のサンゴ一斉産卵期に濾過海水でサンゴ幼生を飼育することで、褐虫藻のいないサンゴポリプと、人為的に褐虫藻を添加し共生させたサンゴポリプを取得し、メタボロームデータ取得のための前処理法を検討した。また、予備的に得られたリアルタイム・メタボローム計測の時系列データ処理を行うための解析手法の検討を進め、メタボロームデータの可視化と変動を捉えるための基本的な手法確立を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
まだ未知な部分が多いサンゴのメタボロームデータの大量取得に成功し、さらにストレス耐性の異なる系統を特徴づけるメタボロームの候補も絞り込むことができた。今回メタボロームデータ取得に用いた枝片は、親サンゴ片をそのまま使用したため、サンゴホスト由来か、共生微生物由来かは不明である。サンゴの一斉産卵期にサンゴポリプを取得し、濾過海水を用いることで共生微生物のいないサンゴサンプルの確保も進めたが、十分なサンプル量を確保することができなかった。サンゴのリアルタイム・メタボローム計測に関しては、サンゴ枝片の処理法の検討が必要なため、まだ測定結果を十分得るには至っていない。また、新型コロナウィルス感染の広がりのため、年度後半に予定していたサンゴ飼育実験とメタボロームデータの取得実施を見送った。以上のことから、進捗状況は少し遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
新型コロナウィルス感染が収束次第、昨年度予定していたサンゴ飼育実験とメタボロームデータの取得を早めに実施する。昨年度親サンゴ片から得られたメタボロームデータの由来を明らかにするために、サンゴ産卵期に取得された配偶子からサンゴポリプを作成し、共生微生物のいないサンゴサンプルを十分量確保した上で、実験の追加を検討する。また、今後リアルタイム・メタボローム計測を実施するためのサンゴサンプル処理方法の検討を進める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究の遂行に必須な質量分析計の装置本体が作動不良を起こすようになり、研究の遂行に支障が生じたため、急遽、当該装置本体について2年間のリース契約を締結し、調達する必要が生じたため。
|