本研究では、サンゴ礁生態系の基盤構成種・サンゴを対象として、サンゴ体内外の代謝産物を網羅的に把握し、ストレス耐性を特徴づける要因を浮き彫りにすることを目的としている。琉球列島のサンゴ礁域に優占するサンゴ種、コユビミドリイシを対象に、ストレス耐性が異なるサンゴ系統でRNA-seqとメタボロームデータの統合解析を実施し、ネットワーク解析によるコミュニティ抽出を行った結果、ストレス耐性と関連があると思われる機能遺伝子・代謝産物群のモジュールの抽出に成功した。また、ハイスループットかつ直接メタボローム解析が可能なPESI/MS/MSと、ソフトウェアRによるデータ処理を合わせた新規の分析プラットフォーム、"PiTMaP"を確立し、リアルタイム・メタボローム計測の基盤を構築した。予備的に得られたリアルタイムメタボロームデータを用いて、非線形時系列解析を実施し、各種メタボロームの因果関係の把握を行った。初夏のサンゴ一斉産卵期にサンゴ幼生を確保して、褐虫藻のいないサンゴポリプと、人為的に褐虫藻を添加し共生させたサンゴポリプを取得してストレス負荷実験を行った。そして得られたサンプルを用いて、PiTMaPによる網羅的なメタボロームデータの取得を行い解析した。その結果、褐虫藻有無・ストレス有無で顕著に異なる代謝産物を数十同定することに成功した。PiTMaPを用いたサンゴを対象としたメタボロームデータ取得・解析手法の確立に成功し、さらには一次代謝物以外の化合物も取り入れつつある。また、LC-Q-TOFMSによる網羅的解析に向けた拡張のための装置の立ち上げと予備試料を用いた条件検討を行った。
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