研究実績の概要 |
分化誘導を促進しつつ、分化細胞を選択することが可能な遺伝子導入系を構築するモデルとして、ES細胞から神経幹細胞を誘導する系を用いた。すでに我々は、独自の自動除去型SeVdpベクターに、自殺遺伝子を搭載させると共に、miR-9標的配列をウイルスポリメラーゼ遺伝子(L遺伝子)に付加することによって、誘導されてきた神経幹細胞を純化することに成功している。しかし、分化誘導開始から選択終了までに70日ほどかかったことから、より短い期間で高純度な神経幹細胞を得る方法の構築を試みた。 昨年度、miRNA標的配列をさらに追加してベクターに挿入することによってベクター除去を促進すると共に、Brn4をベクターから発現させて神経幹細胞への分化を促進することによって、選択終了までの時間を短縮できることを示した。しかしそれでも1ヶ月以上かかることから、ベクターコピー数を全体的に減らすことによってベクター除去効率を向上させることを試みた。 センダイウイルスCタンパク質をベクターから発現させるとベクターコピー数を減少させられる。また、miR-16のように多くの細胞で恒常的に発現するmiRNAの標的配列を追加することによって、多くの細胞でベクターコピー数を減少させられると考えられた。そこで、Cタンパク質をベクターから追加発現させると共に、miR-16, let7aの標的配列をP遺伝子に付加したベクターを作製した。その結果、ベクターが作製できたものの、細胞選択のための遺伝子の発現が低く、ベクター感染細胞を選択するために時間がかかることが明らかになった。この結果から、ベクターを効率よく除去できると共に十分な遺伝子発現量を維持できる、適度なベクターコピー数を目指してベクターを構築する必要があることが明らかになった。
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