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2020 年度 実施状況報告書

脳内において持続的に機能する酵素反応場の構築による脳神経系疾患治療への展開

研究課題

研究課題/領域番号 19K22953
研究機関東京大学

研究代表者

安楽 泰孝  東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任准教授 (60581585)

研究期間 (年度) 2019-06-28 – 2022-03-31
キーワード酵素補充療法 / 薬剤送達システム / 血液脳関門 / 脳神経系疾患
研究実績の概要

生体の恒常性は、酵素が精密制御された反応場を構築することで維持されており、多くの神経回路が集積している脳においてその役割は極めて重要であり、その機能欠損は脳神経系疾患の要因となる。欠損した酵素を補充し、症状改善を計る酵素補充療法が注目されており、疾患部位に『酵素の反応場』を創生する薬物送達システムは、副作用の低い革新的治療法として期待されている。我々が開発したPICベシクルは、酵素を失活することなく封入でき、PIC膜に特徴的な物質透過性を示すことから『酵素の反応場』として最適である。またグルコースを表層に搭載した高分子集合体を構築し、グルコーストランスポーター1を介し血糖値を精密制御することで臨床薬の約600倍を脳へ集積させる革新的な方法論を見出している。そこで本申請課題では、①PICベシクルに酵素を封入し、②表層にBBB通過用のリガンド分子を搭載することで、既存技術では不可能であった脳内に酵素の反応場を創出し、脳神経系疾患の革新的治療技術に展開することを目的とした。前年度までに、BBB通過型PICベシクルを形成する高分子合成及び酵素封入BBB通過型ベシクルの構築、及びその基礎物性評価を確立した。さらに計画を前倒しで体内動態を評価し脳への酵素送達について確認した。そこで当該年度は、このベシクルを用いて①脳への送達におけるPEG密度の最適化、②脳内での機能評価を検討した。①については、表層に搭載したグルコース密度の異なるベシクル(0, 10, 25, 50, 100%)を構築し脳集積量を評価したところ、25%が最も高いことが明らかとなった(3.2%dose/g-brain).また酵素にβガラクトシダーゼ、基質に蛍光プローブを用いてin vivo共焦点顕微鏡を用いて脳内観察を行ったところ、脳内において酵素反応が惹起される様子をリアルタイムで観察することに成功した.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

高分子の分子設計からin vitroおよびex vivoでの機能評価、さらには疾患動物モデルにおける治療効果の確認へと展開される本研究計画において、下記の特筆すべき成果を得ることに成功した。
1) 表層のグルコース密度を精密制御することにより、脳集積量を制御することに成功した。最大で3.2%dose/g-brainを達成した。この値はnakedの酵素と比較して、約100倍高い集積量である。
2) In vivo共焦点顕微鏡を用いて、生きたマウスの脳内において、ベシクルを活用して送達した酵素が目的通り効率的に反応が起きることを確認した。

今後の研究の推進方策

今後は、ライゾソーム病(LSD)の治療酵素として知られるアリールサルファターゼA(ASA)を封入し、ASAと反応することで蛍光を発するプローブを脳室内投与し(蛍光基質はBBB通過能を有さないため)、プローブ由来の蛍光団が生成されることをin vivo共焦点顕微鏡で確認する。ここで、naked ASAを脳室内投与した群と比較し、BBB通過型ベシクルを用いた群の優位性を明らかにする。 またBBB通過型ASA封入ベシクルを用いて、標的とするスルファチド量の減少をLC/MSおよび生化学自動分析装置を用いて定量することでLSDの治療効果を評価し、本システムが脳内において標的とする有害物質を分解する酵素補充療法の反応場として有用であることを実証する。

次年度使用額が生じた理由

コロナ禍において研究活動を十分に実施できなかったために、補助事業期間延長を申請した。
上記の計画書に記載したライソゾーム病を模倣したモデル動物を用いた治療実験を実施する。主に動物購入費用、酵素購入費用、共通機器使用費として用いる。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2020 その他

すべて 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)

  • [学会発表] 脳神経系疾患の革新的治療技術開発2020

    • 著者名/発表者名
      安楽泰孝
    • 学会等名
      次世代医療技術研究会 第4回情報講演会
    • 招待講演
  • [備考] 東京大学大学院バイオエンジニアリング専攻 カブラル研

    • URL

      http://www.bmc.t.u-tokyo.ac.jp

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公開日: 2021-12-27  

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