研究実績の概要 |
3次元椎間板組織モデル構築に用いる細胞ソースの代替え策として、既報の文献に従ってヒトiPS細胞由来硬節細胞の分化誘導について検討を行った。しかしながら、所有するヒトiPS細胞株3株では十分な効率で硬節細胞を分化誘導することができず、最終年度内に3次元培養系の目処を立てるのは難しいと判断した。したがって、ラット尾椎から単離した線維輪細胞を用いて3次元椎間板組織モデルの構築を進めることにした。前年度検討した3通りのゲル培養条件では、1週間培養してもゲル組織がリング状の形態に自己組織化することはなく、ゲル組成、培地について更なる検討を行う必要があると考えられた。そこで、コラーゲンを含むゲル組成5条件について検討を行った。その結果、1条件でのみ培養3日目からゲル組織の収縮が観察され、7日後にはピンセットで取り扱えるほど丈夫なリング状組織がデバイス上で形成された。培養ディッシュ上で同様のゲル組成において3次元培養を行い、線維組織マーカー(Scx, Mkx, typeI collagen)および軟骨マーカー(Sox9, Acan, typeII collagen)の遺伝子発現を比較したところ、自己組織化を促進するゲル組成条件では、これらの遺伝子発現レベルは他のゲル組成条件と比較しておおよそ高いことがわかった。また、デバイスを用いて力学刺激を負荷しながら3日間培養を行ったところ、線維輪細胞は環状方向に配列する様子が観察され、staticな培養条件と比較して、より生体組織に近い形状を有していることが確認された。一方、培養3次元組織の薄切切片を作製してトルイジンブルー染色を行ったところ、異染性は認められず軟骨組織への組織分化が不十分であることが判明した。本研究を通じて、3次元椎間板組織構築の基礎となる培養ゲル組成、培地条件について新たな知見を得て、今後の方向性を見出すことができた。
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