研究課題/領域番号 |
19K22958
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
田中 志信 金沢大学, フロンティア工学系, 教授 (40242218)
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研究分担者 |
野川 雅道 公立小松大学, 保健医療学部, 准教授 (40292445)
内藤 尚 金沢大学, フロンティア工学系, 准教授 (40392203)
鈴木 郁斗 公立小松大学, 保健医療学部, 助教 (10880768)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2023-03-31
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キーワード | 発汗計測 / 皮膚温 / 蒸発潜熱 / 赤外センサ / 発汗部位マッピング |
研究実績の概要 |
前年度の研究結果より蒸発領域皮膚温:Toと蒸発抑制領域皮膚温:Tcの差と水の蒸発潜熱(2,500J/g)から発汗現象を検知可能であることが確認できたが、発汗量推定値は市販発汗計に比べ高値を示した。そこで今年度はこの課題を解決するため以下の改良化研究を行った。 ①前年度使用したサーミスタではリード線を介して熱伝導が生じ温度計測精度に影響を及ぼすことが知られている。そこで当該誤差要因を払拭可能な温度計測法として赤外センサに着目し、高感度サーモパイル型赤外線センサ(MLX90615, Melexis)を用いたプロトシステムを新たに試作した。②上記した計測誤差の別な要因としてヒータの「無効加熱量」の影響が考えられる。そこでToとTcの差(⊿T)をヒータ加熱で補償するのではなく、⊿Tの値から直接発汗量を推定する方法を考案した。具体的には、体表温度の低下を促す熱流の経路を (1)組織から皮膚への熱流、(2)皮膚から空気への熱流、(3)皮膚から外界への放射熱と仮定し、⊿Tの値と水の蒸発潜熱から発汗量の推定を試みた。 ③上記①、②を統合して赤外センサ式の発汗量計測システムを試作し、ハンドグリップ負荷による手掌の発汗量を市販発汗計と同時計測した。 その結果,両者の発汗のタイミングは一致したものの,試作プローブで計測した発汗量は市販発汗計に比べて低値を示し、発汗量推定式のパラメータを見直しなど今後の課題が明らかとなった。 ④汎用サーモカメラと送風機を用いた発汗部位マッピング法の検討:いわゆる「ミノール法」に代わる簡便な発汗部位マッピング法として、発汗部位(湿部)に皮膚温よりも高温の温風を負荷することで非発汗部位(乾部)との温度差を増幅し、汎用サーモカメラにて発汗部位を2次元検知(マッピング)する簡易法を新たに考案しその基本原理を実験的に検証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
発汗量の定量計測に関しては、To及びTc計測用センサを接触型のサーミスタから非接触型の赤外センサに変更することで皮膚温の計測精度自体は向上したものの、皮下組織における熱伝導率が発汗量依存(換言すれば血流依存)である可能性が浮上し、ToとTcの温度差:⊿Tから発汗量を推定する際の生体側パラメータの見直しが必要となり、全体計画の進捗がやや遅れ気味となっている。 一方において今年度新たな発汗計測テーマとして取り組み始めた「発汗部位の二次元マッピング」の新規手法開発に関しては、原理検証実験が予想以上に順調に進み、和文論文1編が掲載されると共に特許も出願済みである。
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今後の研究の推進方策 |
1.発汗量推定法の再検討:今年度は上述したように⊿Tの値から発汗量を推定するに当たって体表温度の低下を促す熱流を3つの経路、すなわち(1)組織から皮膚への熱流、(2)皮膚から空気への熱流、(3)皮膚から外界への放射熱と仮定し、⊿Tの値と水の蒸発潜熱から発汗量を推定した。ところが(1)の経路において組織の熱伝導率が発汗量(血流量)依存である可能性が浮上したため、3つの経路全てについて「熱伝導率」ではなく「熱伝達率」を導入したモデルを構築し発汗量の推定精度向上を図る。 2.発汗部位簡易マッピング法による温熱性発汗部位計測実験:今年度原理検証を終えた本法により、運動負荷中の発汗部位が汎用サーモカメラでマッピング可能か実験的に検証する。具体的にはエルゴメータ負荷などにより温熱性発汗を生起させた時の皮膚表面温度をサーモカメラにより撮像する。その際、サーモカメラの検出温度範囲や温風条件(風速・風温)等を種々調整し、発汗部位と非発汗部位とのコントラストが良好となる至適条件を決定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
元々は昨年度の報告書に記載したとおり国際会議がコロナ禍によりオンライン開催になったためである。 一方において上述したように、発汗量の定量計測法開発については赤外センサを用いたシステムの測定精度向上のための改良化研究が必要であり、センサ購入やプローブ製作などの物品費として使用予定である。 さらに汎用サーモカメラを用いた発汗部位新規マッピング法開発に関しては、体表面に温風を均一に負荷可能な送風機の試作など、実用化に向けての研究に必要な物品費として使用予定である。
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