人をはじめとする多細胞生物において、生命機能の維持・調節をおこなうために、様々な組織・器官がそれぞれ特異的な機能を担うこと、またそれと同時に血管網や神経系を介して他の臓器に情報を伝達することで、生体の恒常性が維持されている。そこで多細胞生物特有の高度化された機能分担システムである、多臓器が関与する生命現象をあきらかにするために、同一個体の様々組織を一切の時間遅れなく連続に生理機能を捕捉する方法論が求められている。これに対応するために、申請者は高開口液浸対物レンズおよび光検出器を内包した、3次元可動軸を持つ複数のアームを接続した非線形光学顕微鏡の作成、およびそれを用いた時間遅れのない多臓器高速イメージング法の開発をおこなってきた。また1年延長することで、これらのシステムをさらに改善することが出来た。その結果、昨年から継続しておこなってきた独立2視野を偏光連続切り替えによって、光路を以前に比べて高速に切り換えることが可能となった。また対物レンズの可動範囲を拡張し、さらに角度を任意に変更するアダプターを組み合わせたことで小動物であれば、観察部位を任意に設定できることが可能となった。これらを用いて、生体光イメージングを遂行することで、生きている動物を用いた生体組織間シグナルを計測することが可能となり、当初の目的を達成することが出来ている。さらに今後この技術をさらに発展させることで、より高速で複雑な生体組織間シグナル伝達を捉えることが可能となることを強く予想させる。
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