研究課題/領域番号 |
19K22960
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
松本 健郎 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (30209639)
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研究分担者 |
前田 英次郎 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (20581614)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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キーワード | バイオメカニクス / メカノバイオロジー / 細胞核 / クロマチン / 力学刺激 |
研究実績の概要 |
遺伝子発現が細胞核内のDNAの物理的な分布の違いに影響されることが認識され始めている.例えば血管平滑筋細胞は組織内ではDNAが核膜付近に局在しているのに対し,数週間培養し増殖が盛んになる(脱分化)と,DNAが核内に満遍なく拡がってくる.脱分化細胞ではDNAの2重ラセンが緩みやすく,よってmRNAの合成が生じやすく,結果として蛋白合成,更には増殖が活発になると推定される.ところで我々は,核内DNA分布が核の変形で容易に変化することを見出した.そこで本研究では,細胞核を定量的に変形させた後のDNA分布の変化を顕微鏡下で詳細に調べる装置を開発し,核変形によるDNA分散と細胞機能の変化との関係を調べることを目的として2年に亙る研究を進めている. 研究初年度である本年度は顕微鏡下観察型刺激負荷装置の試作と評価を行った.具体的にはフォトリソグラフィで作製した細溝を有するシリコーンゴム製の弾性基板を細胞繰返引張負荷用のシリコーンチャンバの底面に貼り付けたものである.細溝は約50μm間隔とし,深さ35μm以上,幅は7.5, 10, 15μmの3条件で作製した.溝を作るための型は高さ35μm以上,幅7.5~15μmの壁が基板の上に平行に何列も並んだ物になるが,そのままでは壁が倒れてしまうために,壁と壁の間を高さは壁と同じで幅10μmの補強壁で150μmおきに繋ぐことにした.試作した基板のマクロな引張量と溝幅の変化量の関係を調べた.何れの条件でもチャンバを1.8倍に伸ばしたときに,溝幅は3倍程度まで拡がり,最小溝幅の7.5μmでも使用する細胞(MC3T3-E1)の平均直径20μmより幅を大きくすることができ,細胞を落とし込むことができた.なお,細胞が溝に落ち込む割合を増やすため,基板表面を2%BSAでコートして細胞の基板接着を抑制することが有効であった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度に試作した細胞圧縮装置を利用して細胞の機能評価まで行う予定であったが,フォトリソグラフィーによる型の作製に手間取ったため,顕微鏡下観察型刺激負荷装置の試作と評価に留まってしまったため.
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今後の研究の推進方策 |
試作した装置を利用してデータの蓄積を進める.また,新たに高解像のZeissの共焦点顕微鏡を導入したので,これを用いて細胞核圧縮に伴う核内DNAの変化を詳細に検討する予定である.
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