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2019 年度 実施状況報告書

ウイルス干渉作用を利用した簡便で効率的な新規ウイルスベクター除去技術の開発

研究課題

研究課題/領域番号 19K22968
研究機関広島大学

研究代表者

入江 崇  広島大学, 医系科学研究科(医), 准教授 (70419498)

研究分担者 福士 雅也  広島大学, 医系科学研究科(医), 助教 (50313515)
坂口 剛正  広島大学, 医系科学研究科(医), 教授 (70196070)
酒井 宏治  国立感染症研究所, ウイルス第三部, 主任研究官 (70515535)
研究期間 (年度) 2019-06-28 – 2021-03-31
キーワードセンダイウイルス / ウイルスベクター / ベクター除去 / ウイルス干渉
研究実績の概要

近年、iPS細胞関連研究の進展やゲノム編集技術の急速な普及などにより、細胞や個体へのより安全かつ効率的な遺伝子導入技術の必要性が益々高まってきている。この目的のために、ウイルスの感染能力を利用して能動的に遺伝子を細胞内に導入、発現させる様々なウイルス由来ベクターが開発され、広く利用されてきた。ウイルスベクターでは、導入遺伝子の一過性及び持続性発現の選択や、発現のON/OFFなども一部で可能ではあるが、任意の時点で遺伝子発現を停止させ、さらに細胞、個体内から導入したウイルスベクターを完全に除去することは非常に困難であり、これを達成するための技術もほとんど開発されていない。本研究では、iPS細胞作製用ベクターなどで高い使用実績を誇るセンダイウイルスベクターについて、これまでに我々が発見した様々なウイルス干渉作用を応用した、簡便で効率的な新規ウイルスベクター除去技術の開発を目的として研究を行っている。
目的遺伝子を搭載したウイルスベクターとしては、持続感染型センダイウイルスを用い、この発現を任意に停止、除去する干渉型ベクターの探索を進めることが望ましいと考えた。持続感染型SeVベクターは、温度感受性変異株を利用したものが報告されている。温度感受性変異株は生体温度(37℃)より低い34℃では活発に増殖するが、37℃では増殖できず、これをベクターとして用いた場合、ベクター接種個体で感染の拡大は起こらない。ある程度感染の拡大のある持続感染ウイルスの獲得を試み、これを得ることに成功した。このウイルスは、神経細胞を含む様々な培養細胞で容易に持続感染が成立した。このウイルスの持続感染メカニズムの解明を進めるとともに、蛍光蛋白質発現組換えウイルスを作製し、蛍光蛋白質の発現を指標に、持続感染細胞での持続感染ウイルスの増殖に干渉し、これを除去できるウイルスの探索を進めている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

当初の目的は、既存のウイルスをベースに、あるウイルスベクターの感染に干渉し、これを除去するウイルスを探索することであったが、持続感染性と生体温度でのウイルス増殖能の両方をもった、よりベクターとして適した新規ウイルス材料を獲得することができた。このウイルスは、単にウイルスベクターとして新たな可能性を示すだけでなく、このようなウイルスが感染個体でのウイルス増殖中に偶発的に出現しうることを示しており、個体集団でのウイルスの伝播、維持に新しい示唆を与えるものである。現在このウイルスを用いて本研究の主目的であるウイルスベクター除去技術の開発を進めるだけでなく、持続感染獲得メカニズムの解明、数理モデルを用いた個体集団でのウイルス動態の検討など、新たな展開を行っている。

今後の研究の推進方策

今後は、本年度に得られた生体温度でウイルスの増殖、拡散を起こしながら持続感染する新規センダイウイルスを基に作製した蛍光蛋白質(Venus)発現ウイルスをベースに、このウイルスの持続感染細胞からウイルスを除去できるウイルスの探索を進めるとともに、上記ウイルスベクターの半生化(F蛋白質及びHN蛋白質欠損型)などの作製とこれを用いた検証を進める。また上記成果を基に、マウスを用いた検証も行う。
また、「現在までの進捗状況」の「理由」欄にも示したが、上記の新規ウイルスは、従来報告のない新しい性質をもったものであり、感染個体でのウイルス増殖中にも同様のウイルスが偶発的に自然発生しうることを示唆している。このウイルスの持続感染メカニズムの解明を進めるとともに、数理モデルを用いて個体集団でこのようなウイルスが発生した場合に、ウイルス動態にどのような影響を与えるのかなど、新たな検証を行っていく。

次年度使用額が生じた理由

当初の予定では、すでに保有している持続感染ウイルスを用いて研究を推進する予定であり、実験を一部実施しているが、新たに生体温度でウイルス増殖能を有する全く新しい持続感染性センダイウイルスの獲得に成功した。このウイルスは、従来型と比べてウイルスベクターとしての適用範囲が広くなり、有用であると考えら得られるため、このウイルスのゲノム配列の決定、このウイルスをベースとした組換えウイルス作製系の構築など、当初予定していなかった実験の実施が必要となった。このため、当初実施予定だった実験に遅れが生じ、次年度使用額が生じた。これについては、前年度初期の成果を踏まえつつ、当初計画していた干渉性ウイルスの探索に使用する。現在、新規取得ウイルスに関する上記の解析については完了し、また上記持続感染性ウイルスに蛍光蛋白質(Venus)を搭載した組換えウイルスの作製も完了している。本年度は、このウイルスを主に用いてた解析を進める予定である。

  • 研究成果

    (16件)

すべて 2020 2019 その他

すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Molecular bases for HOIPINs-mediated inhibition of LUBAC and innate immune responses2020

    • 著者名/発表者名
      Oikawa Daisuke、Sato Yusuke、Ohtake Fumiaki、Komakura Keidai、Hanada Kazuki、Sugawara Koji、Terawaki Seigo、Mizukami Yukari、Phuong Hoang T.、Iio Kiyosei、Obika Shingo、Fukushi Masaya、Irie Takashi、Tsuruta Daisuke、Sakamoto Shinji、Tanaka Keiji、Saeki Yasushi、Fukai Shuya、Tokunaga Fuminori
    • 雑誌名

      Communications Biology

      巻: 3 ページ: 1~17

    • DOI

      10.1038/s42003-020-0882-8

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] SARS-CoV-2 ORF3b is a potent interferon antagonist whose activity is further increased by a naturally occurring elongation variant2020

    • 著者名/発表者名
      Konno Yoriyuki、Kimura Izumi、Uriu Keiya、Fukushi Masaya、Irie Takashi、Koyanagi Yoshio、Nakagawa So、Sato Kei
    • 雑誌名

      bioRxiv

      巻: なし ページ: 1~24

    • DOI

      10.1101/2020.05.11.088179

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 特異なセンダイウイルスクローンの単離とワクチンアジュバントとしての利用2020

    • 著者名/発表者名
      入江崇, 酒井宏治, 坂口剛正
    • 雑誌名

      BIO Clinica

      巻: 35 ページ: 78~81

  • [雑誌論文] Effects of Traditional Kampo Drugs and Their Constituent Crude Drugs on Influenza Virus Replication In Vitro: Suppression of Viral Protein Synthesis by Glycyrrhizae Radix2019

    • 著者名/発表者名
      Nomura Toshihito、Fukushi Masaya、Oda Kosuke、Higashiura Akifumi、Irie Takashi、Sakaguchi Takemasa
    • 雑誌名

      Evidence-Based Complementary and Alternative Medicine

      巻: 2019 ページ: 1~12

    • DOI

      10.1155/2019/3230906

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Development of new concept viral vectors exerting both vaccine and adjuvant activities2019

    • 著者名/発表者名
      Irie Takashi、Sakai Kouji、Sakaguchi Takemasa
    • 雑誌名

      Impact

      巻: 2019 ページ: 9~11

    • DOI

      10.21820/23987073.2019.7.9

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] センダイウイルスがインターフェロンに対抗する仕組み2019

    • 著者名/発表者名
      坂口剛正, 入江崇, 小田康祐
    • 雑誌名

      日本ウイルス学会 北海道支部会報

      巻: 50 ページ: 7~12

  • [雑誌論文] ウイルスベクターワクチンの現状と展望2019

    • 著者名/発表者名
      入江崇, 酒井宏治, 坂口剛正
    • 雑誌名

      BIO Clinica

      巻: 34 ページ: 107~111

  • [学会発表] センダイウイルスの持続感染獲得メカニズムの解明2020

    • 著者名/発表者名
      入江崇
    • 学会等名
      Negative Strand Virus-Japan Symposium 2020
  • [学会発表] モノネガウイルス遺伝子間配列の遺伝子発現制御機能2020

    • 著者名/発表者名
      西垣健太, 入江崇
    • 学会等名
      Negative Strand Virus-Japan Symposium 2020
  • [学会発表] Characterization of a Sendai virus isolate producing copyback-type defective viral RNA and its potential as an effective vaccine adjuvant2019

    • 著者名/発表者名
      入江崇
    • 学会等名
      第67回 日本ウイルス学会学術集会
  • [学会発表] 特異なセンダイウイルスクローンの単離とワクチンアジュバントとしての利用2019

    • 著者名/発表者名
      入江崇
    • 学会等名
      第34回 中国四国ウイルス研究会
  • [学会発表] 特異なセンダイウイルスクローンの単離とワクチンアジュバントとしての利用2019

    • 著者名/発表者名
      入江崇
    • 学会等名
      第33回 インフルエンザ研究者交流の会シンポジウム
  • [学会発表] センダイウイルス~基礎ウイルス学から応用へ~2019

    • 著者名/発表者名
      入江崇
    • 学会等名
      名古屋大学 第96回 創薬科学セミナー・GTRセミナー
    • 招待講演
  • [学会発表] Characterization of a Sendai virus isolate producing copyback-type defective viral RNA and its potential as an effective vaccine adjuvant2019

    • 著者名/発表者名
      入江崇
    • 学会等名
      Influenza and Other Infections Symposium 2019
    • 国際学会
  • [学会発表] 新規組換えウイルス系を用いたパラミクソウイルスアクセサリー蛋白質の機能解析2019

    • 著者名/発表者名
      入江崇
    • 学会等名
      Negative Strand Virus-Japan Symposium 2019
  • [備考] ウイルス学講座 - 広島大学

    • URL

      https://home.hiroshima-u.ac.jp/isaikin/

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公開日: 2021-01-27  

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