研究課題/領域番号 |
19K22978
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研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
根岸 洋一 東京薬科大学, 薬学部, 教授 (50286978)
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研究分担者 |
高橋 葉子 (遠藤葉子) 東京薬科大学, 薬学部, 助教 (30453806)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | 光音響 / ナノバブル |
研究実績の概要 |
現在、血管病変の早期診断を目的として、光音響(PA)イメージング法に基づいた高精度なPA造影剤の開発が求められている。本研究では、超音波(US)造影ガス封入ナノバブル(NB)の基盤技術に光音響技術を新たに融合させることで、血管病変の標的化診断治療に資するPA造影剤を搭載した新規PANBを開発し、PA法とUS併用による非侵襲的なセラノスティクスシステム(診断と治療)の創製を目指す。 本年度では、PAイメージングに使用する際のPA応答性ナノ粒子の作製と生体内における検出及び評価系の構築を目的とし検討した。PA造影剤として脂溶性カルボシアニン色素であるDiRを用い、DiR搭載ナノ粒子を作製(粒子径約150 nm)後マウスに投与し、がん部位又は脛骨筋に光音響を発生させるLEDレーザー光源を2波長 (750 nm及び850 nm)同時に照射した。結果、2波長のレーザーを照射することで組織中の血液とPA応答性ナノ粒子を判別でき、組織内での高精度イメージングが可能であることが示唆された。しかしながらイメージングによる検出感度としては、やや深部組織になると感度レベルが低下してしまう傾向が観察された。今後、検出可能な組織深度と感度及びPA応答性NBによるPAイメージングについて検討を行っていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、PAイメージングに使用する際のPA応答性ナノ粒子の作製と生体内での検出及び評価系の構築を目的とし検討した。DiR搭載ナノ粒子をマウスに投与後、LEDレーザー光源を2波長 (750 nm及び850 nm)同時に照射しPAイメージングを試みた結果、850 nmの波長ではヘモグロビンに由来する血液が可視化され、750 nmの波長を用いることでDiR由来の光音響イメージングが可能となった。これより2波長のレーザー光源とDiR搭載ナノ粒子を用いることで組織内での高精度イメージングが可能であることが示唆された。以上より、本研究は順調に進捗していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
1 PA造影剤搭載標的化ナノバブルの調製と最適化 昨年度調製したPA応答性ナノ粒子に超音波造影ガスを内封することでPAナノバブル (PANB)の調製を行なう。加えてがん及び下肢虚血部位標的化NBの調製には、がん標的化抗体を表面修飾したNBに添加混合することで抗体修飾NBを調製する。更にNBに組み込むPA造影剤として、DiRに加えICGなど光音響化合物候補のNB化を試み、セラノスティクスシステムに適したPANB製剤の開発も試みる。これらPANBは、1%アガロースゲルファントムを用いPA造影剤の検出限界濃度及び検出深度を測定することで、PA造影剤搭載量の最適化を図る。 2. 光音響NBのin vivoイメージングツールとしての有用性評価 がん細胞を移植した担癌モデルマウス及び下肢虚血モデルマウスを作製し、1.で最適化したNBを静脈内投与し、in vivoでの光音響イメージングが可能となるかを検証する。さらに深部到達性を考慮して、粒子径100-400 nmほどのNBを高速ミキサー法により調製する。これにより、より多くのNBが深部組織に集積することで、光音響効果の増強が得られるかを検証する。 3.光音響NBによるセラノスティクスシステムの構築 光音響NBの超音波力学療法の可能性を検討するために、1.で作製したDiRやICGなどの光音響化合物候補搭載NBを担癌モデルマウスに静脈内投与し、光音響イメージング装置で標的化NBの集積を確認した後に、集束超音波をがん組織へと照射する。同時にバブルの崩壊性とPA造影剤の組織内分布を光音響イメージング装置で描出可能かについても検討を加え、がん診断治療に向けた光音響NBによるセラノスティクスシステム構築の可能性を明らかとする。さらに下肢虚血部位標的化光音響NBには治療用核酸を搭載し、同様の検討を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)研究計画は、ほぼ予定通り進み、ナノ粒子を利用した高精度なPAイメージングが可能であることが示唆された。しかしながら、がん及び下肢虚血部位を標的化するための抗体を用いた場合での有用性評価までに至らなかったため、その分の試薬が未使用額となった。 (使用計画)次年度使用計画として、標的可能な光音響NBを作製するために必要な抗体(ヒト由来IgG抗体)修飾を試みる。さらにこれらを利用したモデルマウスにおける体内動態評価・イメージング評価を行う。これらの研究進捗を図るために使用する予定である。
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