研究課題
マウス・ラットの頸部リンパ管の走行を解剖学的に確認した。その結果、表在性ならびに深部リンパ管系が存在し、特にGlymphatic pathwayを形成する頸部深部リンパ管系の関係を明らかにした。頸部深部リンパ管系は、頸動脈に近接してそのリンパ節が存在し、輸入・輸出リンパ管の走行を確認できた。本実験では、頸部深部リンパ管系(Deep Cervical Efferent Lymphatics: DCEL)の輸出リンパ管の機能解析を行った。アミロイドベータ(Ab)1-40を標本内腔に選択的に投与できる実験系を確立した。標本に連結するinflowリザーバーとoutflowリザーバーの静水圧差を利用して、約1時間かけて標本内腔に2mL薬液を投与できた。DCELに対するAb1-40の用量反応を検討した結果、nMレベルでリンパ管自発性収縮の非可逆的障害を惹起することが判明した。次にリンパ管自発性収縮を制御する以下の分子の関与について検討した。L-NAME(内因性NO阻害薬)、アポシニン(内因性活性酸素種阻害薬)、アラキドン酸(内因性プロスタノイド基質)、プロプラノロール(βアドレナリン受容体拮抗薬)、Dooku-1(Piezo-1チャネル阻害薬)およびはグリベンクラミド(ATP感受性K+チャネル阻害薬)は、Ab1-40によるリンパ管障害を改善しなかった。以上の結果から、Ab1-40のDCEL自発性収縮は、リンパ管平滑筋に対する直接作用であることが示唆された。Abは、メタロプロテアーゼの一種であるネプリライシンによって分解されること知られている。そこで、集合リンパ管におけるネプリライシンの発現と分布を免疫組織学で検討した。その結果、ラット集合リンパ管平滑筋にネプリライシンの発現していることを確認できた。今後、Ab1-40のDCEL自発性収縮障害に対する改善効果を検討する予定である。
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