研究課題/領域番号 |
19K22985
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研究機関 | 生理学研究所 |
研究代表者 |
福永 雅喜 生理学研究所, システム脳科学研究領域, 准教授 (40330047)
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研究分担者 |
梅田 雅宏 明治国際医療大学, 医学教育研究センター, 教授 (60223608)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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キーワード | 髄鞘密度 / 大脳皮質 / 7テスラMRI / 皮質分節 |
研究実績の概要 |
レイヤーレベルの大脳皮質髄鞘密度を反映するMyeloarchitectonic imaging法の開発と、個人脳データに基づく脳アトラス構築のために、①皮質内髄鞘分布を高度に反映する定量的磁化率画像および緩和画像の開発、②細胞微細形状計測に特化した拡散画像法の開発と7テスラ超高磁場MRIへの導入、③定量的磁化率画像、緩和画像および拡散画像から髄鞘密度分布様態を画像化、④Myeloarchitectonic imagingによる大脳皮質髄鞘密度分布解析と皮質分節再構築の4課題を計画した。 今年度は、大脳皮質微細髄鞘構造描出に関する技術的基盤整備を実施した。とくに大脳皮質内の髄鞘微細構造描出に応用する磁化率効果に鋭敏な周波数画像および磁化率画像の制度改善のために、MRI撮像の基盤となるグラディエントエコーパルスシーケンスに、位相補正用のナビゲーターエコーおよび生体由来のB0変動の補正、エディカレントおよびケミカルシフト補正のためのグラディエントペアリング機能を導入した。また、皮質内拡散情報収集のための拡散強調MRIのエンコードスキームおよびポストプロセスの最適化を実施した。7テスラ超高磁場下において、一般に拡散強調MRI収集で用いられるシングルショットEPIは、背景磁場の不均一に由来する幾何学的歪みが問題となる。磁化率画像や緩和時間画像とのマルチパラメトリック解析には、画像モダリティ間に正確なレジストレーションが要求されるため、フィールドマップ収集と非線形歪み補正を導入した。これらにより、高分解能画像で特に増強される歪みアーチファクトを補償することが可能となった。これらの基盤技術をもとにヒト計測を開始した。また、次年度に計画しているマカクサル脳計測の為に、麻酔下安静状態および摘出固定脳計測への最適化を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大脳皮質内の髄鞘微細構造描出に応用するグラディエントエコーパルスシーケンス、拡散強調エコープラナーイメージングシーケンスの開発、導入および各種アーチファクト補正のための画像処理パイプラインの構築が順調に進んでいる。すでに、これらの計測系を用いたヒト計測実験を開始しており、サブミリメーターの空間分解能を持つ画像収集を実施している。検討の初期段階として、比較的、大脳皮質厚が大きい、一次運動野を対象に領域内のコントラストバリエーション、皮質内のレイヤー状コントラストの描出を確認している。これらの基盤技術の導入が順調に進んだため、次年度の予定していたマカクサルの脳計測実験を一部前倒しし、実験を開始した。マカクサル専用に設計されたMRIコイルを応用し、麻酔安静下および摘出後の固定脳の磁化率画像、拡散画像最適化に着手した。一方、年度の後半に予定していたヒトボランティア実験は、当初の予定通りの実施が困難であった。ヒト実験ではやや遅れがあったものの、令和2年度の研究計画の設定が可能であること、サル実験では計画を前倒して実施出来たことから、研究は、概ね順調に進んでいると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、レイヤーレベルの大脳皮質髄鞘密度を反映するMyeloarchitectonic imaging法の開発と、個人脳データに基づく脳アトラス構築のために、①皮質内髄鞘分布を高度に反映する定量的磁化率画像および緩和画像の開発、②細胞微細形状計測に特化した拡散画像法の開発と7テスラ超高磁場MRIへの導入、③定量的磁化率画像、緩和画像および拡散画像から髄鞘密度分布様態を画像化、④Myeloarchitectonic imagingによる大脳皮質髄鞘密度分布解析と皮質分節再構築の4課題を実施する。今年度は、シーケンスプログラムの改良などの技術導入を主体として計画し、ほぼ予定通りの進捗であった。次年度は、これらの技術的基盤のもと、複数のMRI画像モダリティを組み合わせることによるマルチパラメトリッククラスタリングを適用し、大脳皮質区分への最適化を実施する。ヒト生体を対象に髄鞘密度分布様態の画像化を試みると共に、長時間の生体計測が可能となる麻酔下安静状態のマカクサルおよび組織学的対応付けが可能となるサル固定脳にて検証を行う。以上の過程により確立したMyeloarchitectonic imaging法を用いて、個人脳を対象とした大脳皮質髄鞘密度分布解析を実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、シーケンスプログラムの改良などの技術導入を主体として計画しており、順調に進んだ。これらは、主として、申請者が従事した。これらの技術開発のもと、年度後半に健常ボランティアによるヒト実験を当初予定していたが、ボランティア収集を予定通り進めることが困難であったため、これに充当するための被験者謝金、ヒト収集データの解析のための実験・解析補助への謝金に余剰が生じた。技術的問題にて実験が遅れているわけではないため、これらの実験計画は、次年度に早期に実施を予定しており、研究期間内に実施が可能と考えている。
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