研究課題/領域番号 |
19K22987
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
錦戸 文彦 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 先進核医学基盤研究部, 主任研究員(任常) (60367117)
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研究分担者 |
人見 啓太朗 東北大学, 工学研究科, 准教授 (60382660)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | TOF-PET / PET検出器 |
研究実績の概要 |
本研究課題はタイムオブフライト型陽電子放出断層撮影法(Positron emission tomography, PET)を実現するための、PET検出器の高時間分解能化を目的としている。本課題では高時間分解能化の実現のために、高速な発光現象であるチェレンコフ光を利用していることが特徴である。 本年度は臭化タリウム半導体検出器からのチェレンコフ光を時間特性の高いMulti-pixel photon counter(MPPC)で検出することにより、高時間分解能化を目指した。臭化タリウムは3 mm×3 mm×3 mmの結晶を用い、反射材にはESRフィルムを用いた。MPPCの受光面のサイズは臭化タリウムのサイズと同じ3 mm×3 mmであり、光学グリスを用いて取り付けを行った。同時計数用の検出器にはLYSOとMPPCからなる検出器を用いた。MPPCからの信号を高周波アンプで増幅した後、デジタイザを用いて波形を記録し、波形解析を行うことで時間分解能を測定した。 その結果、511keVのガンマ線に対して500ピコ秒以下の時間分解能を得ることができた。また、発光量や集光量を高めることより更に時間分解能が向上することも示すことができた。それにより300ピコ秒台の時間分解能の実現の可能性も示されている。これらの時間分解能は半導体を用いたガンマ線検出器としては優れた性能であり、タイムオブフライト型検出器としての利用することが可能であることを示している。この結果を基にPET検出器の開発を進めることにより、より高いイメージング性能を持つPET装置の開発が可能となると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題のテーマであるチェレンコフ光をを用いた高時間分解能を有するPET検出器の開発を進めてきた。本年度までに研究・開発を行って得られた、臭化タリウムを用いたPET検出器の時間分解能は他の半導体検出器と比較して非常に高性能な結果が得られており、進捗としては順調であるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
前述の通り、現在までの結果でも優れた時間分解能が得られており、開発の基本設計は正しいと考えられる。一方で、本課題での研究結果からはより高い時間分解能を得ることが可能であることが示唆されており、更なる研究・開発を行うことによりより高い性能が得られることが期待できる。検出する光の量を増やすことが最も性能に影響があることが示されており、形状・反射材・取り付け法の最適化を続けていくことが基本方針になる。また、検出光子数を増加させた場合には、信号読み出しのための高周波アンプのダイナミックレンジの調整も行う必要が有ると考えらえる。
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次年度使用額が生じた理由 |
前述の通り、本課題の成果の成果としては十分なものが得られているが、より優れた成果を得るために追加の実験を計画している。そのための素子・回路の作製の期間に更に数か月要するため、その製作費を次年度に計上した。また、その結果の学会・論文での発表にかかる経費として次年度に計上を行った。
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