本年度(2020年度)は「科学普及活動家ルイ・フィギエにおける科学と非科学の関係性」として2年間で進められた研究の、最終年度に該当する。 本研究は、科学普及活動家ルイ・フィギエの著作を中心に分析したものであり、この人物が当時の「科学」と「非科学」の関係性をいかに捉えていたのかを考察したものである。 本年度においては、19世紀フランスの「科学普及活動」(vulgarisation scientifique)の中で活躍したフィギエが、1870年代以降、死後の世界に関する著作を残している点に着目した。フィギエの中では、科学的な関心と死後の世界に関する関心は分断されることなく、この両者はお互いに補い合うような関係を保ちながら、分かちがたく結びついているのではないかという仮説のもと、分析と考察を進めることになった。具体的には、科学普及活動家としてのフィギエが、本来であれば科学の立場とは相容れないはずの現象に関心を抱き続けてきた点を示した口頭発表を4件、実施した。そしてフィギエの著作の一つである『死の明くる日』と彼の天文学への関心との関係を、科学史の観点から分析した論文が1件、刊行された。 2年間で実施した本研究の1年目(2019年度)には日本フランス語フランス文学会、そして2年目(2020年度)には日本科学史学会に、それぞれ論文を掲載して頂き、結果的に「フランス文学」と「科学史」という2つの学問領域を横断するような研究を実施することができた。
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