研究課題
研究活動スタート支援
本研究は、18世紀ドイツの哲学者I. カントの『判断力批判』(1790)において展開された美学理論に基づいて、醜さにはいかなる種類があるのか、そして、それらの醜さはいかなる関係にあるのかを明らかにすることを試みた。それにより、「醜の美学」の体系化へ向けた準備を行った。本研究は、私たちが醜さを言明する際に感じている感情(不快の感情)に着目し、その違いから醜さの分類を行った。また、感情を生み出す心の状態とそれを形成する認識能力の働きを軸に、種々の不快の感情および醜さの関係性を明らかにした。
美学
本研究は、これまで「美しさの美学理論」として研究されてきた、『判断力批判』に代表されるI. カントの美学を、「醜さの美学理論」として捉え直すという独創的な学術的意義を持つ。また、単に一種類の醜さの概念だけでなく、複数の醜さとそれらの関係性を問題にする本研究には、私たちが素朴に直面する醜さやそれに関連する表象が何であるのか、直感的なものを学術的に明らかにするという社会的意義をあげることもできる。