本研究においては、岩佐又兵衛及び松平忠直に関する江戸時代の伝承を精査するとともに、明治以降の研究史を丹念にたどり、伝承と史料的な事実を慎重に区別するよう努めた。次に、個々の作品のモチーフを観察し、そこに込められた作者の意図を分析し、作家の生い立ちとは別の制作背景を読み解くことを試みた。さらに、様式の分析から作品の制作年代を見直し、時代の動向と作品とを結びつける作業を行った。こうした作業により、これまでとは異なる作品理解を提示するとともに、今後の議論の前提となる様々な客観的事実を指摘したことが私の研究の成果である。
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