研究課題/領域番号 |
19K23004
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
椛島 雅弘 大阪大学, 文学研究科, 招へい研究員 (90823807)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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キーワード | 中国兵学思想史 / 馬王堆漢墓帛書 / 新出土文献 / 『天文気象雑占』 / 暈占 / 術数 |
研究実績の概要 |
1、馬王堆漢墓帛書『天文気象雑占』の暈占部分の釈読を行った。「暈」とは、天文現象の一つであり、太陽(日)や月の周囲に観測される気のことを指し、中国では、古くから日暈や月暈を含めた「旁気」に関わる占術が存在していた。報告者は、『天文気象雑占』に見える計六十七条の暈占について、先行研究や関連文献の記述を参照しつつ、釈読を行った。また、図や占者について、基礎的考察を行った。特に図については、図付きの暈占五十五条のうち、四十四条が「図+占辞」の形式である一方、残りの十一条は「図+図の記述+占辞」という形式を取る点、図の解釈について、第二列42・第二列43の月と思しき絵や、第五列のS状の線等、後世の記述を参照しても推定が難しいものが存在する点、図と図の記述との関連性について、第二列38・50や第五列1・2のように、図では日暈や月暈が描かれているが、図の記述ではその点について言及されていない点について指摘した。
2、馬王堆漢墓帛書『天文気象雑占』の暈占部分の理論構造の検討を行った。暈占について、まず『史記』『淮南子』を引用し根本的理論について確認した後、具体的な理論について、『天文気象雑占』の暈占を中心に多角的視点から考察した。暈占は、原則として天の思想・天人感応思想が下地にあり、その上に同類相感の説が介在して成立していた。『天文気象雑占』の暈占の場合は、主に暈と軍・天子・国・地域との感応が確認できた。また、それぞれの占文に注目すると、複数のバリエーションが確認できた。また、陰陽思想・五行思想との関わりから『天文気象雑占』の暈占について考察した所、あくまで可能性の指摘に留まるが、一部に関連する暈占について言及した。
3、2020年2月、第72回中国出土文献研究会にて、「古代中国における日月暈占について―馬王堆漢墓帛書『天文気象雑占』を中心として」という題目で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、当初の予定通り、『天文気象雑占』の暈占部分について、釈読・理論構造への考察を完了した上で、研究会でも発表することができた。これらの成果は、研究雑誌へ投稿予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究を踏まえ、まず『天文気象雑占』の雲気占部分の釈読・理論構造の考察を行う。その後、馬王堆漢墓帛書に見える『五星占』の釈読・理論構造の考察を行う。以上の研究成果については、オンラインでの研究会を中心に、可能であれば発表し、専門家との意見交換を行い、研究の精度を高めていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、次年度使用額を使用し、馬王堆漢墓帛書の図版を中国から輸入購入する予定であったが、新型コロナウィルスの影響により、未だ購入が完了できていない。次年度使用額は、図版購入の費用に充てる予定である。 翌年度分として請求した助成金については、書籍購入・物品購入の他、状況が許せば東京への資料調査や研究会への参加するための費用として使用する予定である。
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