『愛の四書』はドイツ各地に所蔵されており、挿絵ではドイツ独自の寓意的な表現がみられることから、現地において次のような調査をした。まずドイツで『愛の四書』の各版を実見して、挿絵や刷りの状態の異同を確認した。その結果、各版の書き込みや刷りの状態、彩色の有無、含まれる挿絵の相違が明らかになった。 次にミュンヘンの中央美術史研究所で、16世紀ドイツの風景表現並びに寓意表現や神話図像に関する資料を渉猟した。『愛の四書』挿絵にはドイツの風景を表したものと、詩文に関連した神話図像があるが、ツェルティスが参考にしたと思われるイタリアの作例と比較しながら、ドイツ独自の神話図像・風景表現としての意味を検討した。
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