研究課題/領域番号 |
19K23009
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
川上 恵理 神戸大学, 人文学研究科, 人文学研究科研究員 (10844813)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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キーワード | 美術史 / 版画 / 神聖ローマ帝国 / マニエリスム / プラハ / 北方ヨーロッパ |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、神聖ローマ皇帝ルドルフ2世のプラハ宮廷とその周辺における版画の地位を明らかにすることである。そのために、同じ平面造形芸術であるが社会的地位の高い絵画と比較したさいに、版画がいかに評価され、どのように位置づけられたかを考察していく。 初年度にあたる令和元年度は、史料や同時代テクストにおける版画および版画家の地位に関する調査を主に進めた。特に、ルドルフ2世のクンストカマー(美術品蒐集室)の目録のうち、17世紀のものを主たる調査対象として、それらにおける版画やその原版の記録を調査した。さらに、版画家に対するルドルフ2世のプリヴィレギウムの読解も進めている。これらの成果については論文や翻訳の形でまとめていないが、次年度にはこれに基づき成果を発表する予定である。 その他に、同時代のイタリアの画家かつ美術理論家のフェデリコ・ズッカリの作品とその美術理論についても、個別研究と翻訳を行っている。プラハの宮廷画家バルトロメウス・スプランゲルはズッカリから強く影響を受けているためである。この研究では、ズッカリの《アペレスの誹謗》の原画と版画について、その下絵と原画、版画の間での描写の変更点を踏まえながら作品解釈を行っている。これについては、研究会にて口頭発表を行った。その結果、版画と原画の関係やその制作プロセスについて考察を深めることができた。本研究課題を遂行する上でも、この考察は有益である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記の史料調査は順調に進展しており、これに関して考察も進めている。ただし、当初予定していなかったズッカリに関する調査も行っていることから、成果の発表に関しては多少の遅れも生じている。しかし、この調査は、次年度に行う複製版画の調査研究にさいして有益であるため、全体としてはおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度にあたる令和2年度は、当初の研究計画どおり、プラハの宮廷芸術家の作品を原画とするか、あるいは宮廷版画が手掛けた複製版画の作品調査を行い、これまでの史料やテクスト読解の成果を踏まえつつ、プラハ宮廷における「複製版画」の定義とその位置づけの見直しを行う。そのためには、美術史関係の文献が揃い、調査対象の作品があるチェコやドイツ、オランダ等での現地調査が必要となるので、渡航が可能になり次第調査に行き、成果をまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
3月頃に海外調査を予定していたが、新型ウィルスの影響等により渡航が困難となった。この分は、次年度に可能であれば海外調査を行うので、その渡航費とする予定である。
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