本研究の目的は、人と超音波診断装置がどのように胎児への「合成志向性」を生成して行くのかを、Nuchal Translucencyを事例として明らかにすることであった。これまで超音波診断装置の開発過程及び、胎児のダウン症を予測するために用いられる後頸部のわずかな厚みである「Nuchal Translucensy(NT)」の「発見」に至る経緯を明らかにするための資料収集をおこなってきた。新型コロナウイルスの感染拡大により、計画の多くを断念せざるを得なかったが、今年度は、女性と技術の関係性を論じる科学技術社会論における議論に本研究の関心を位置付けることで、胎児への「合成志向性」を生成する重要な要素として、超音波診断装置と胎児の間に存在する「女性の身体」を加えるという今後の方向性を明確にした。特に今年度、イギリスのWellcome Libraryにおいて資料を収集できたこと、またスウェーデンのKarolinska研究所及びUppsala大学において、ジェンダードイノベーションに係る産科医や、ジェンダー論の研究者らと意見交換することができたことは、この指針を得る上で大変有意義であった。現在、成果を論文にまとめている。
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