研究課題/領域番号 |
19K23018
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
石川 学 慶應義塾大学, 商学部(日吉), 講師 (60842945)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2022-03-31
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キーワード | フランス思想史 / フランス文学 / 20世紀 / 文学論 / ジョルジュ・バタイユ |
研究実績の概要 |
本研究は、20世紀フランスの作家ジョルジュ・バタイユの思想を参照軸として、アンドレ・ブルトン、ジャン=ポール・サルトル、エマニュエル・レヴィナスという同世代以降の文学者や思想家たちの思想を検証し、もって、バタイユから現代に至る思想史の一系譜を浮かび上がらせようとするものである。2020年度は二年計画の最終年度(予定)にあたり、前年度に獲得したバタイユとブルトンの連携に関する知見を拠り所にしつつ、サルトルならびにレヴィナスという哲学者たちとの連携のありようをいっそう掘り下げていくことが目論まれた。 サルトル関連では、バタイユがサルトルを直接に意識している論考から視野を広げ、第二次世界大戦後から晩年までの哲学的論考において、「無の実体化」というサルトルからの批判がバタイユによってどのように引き受けられていくのかを検証した。サルトルがバタイユと合わせて批判するモーリス・ブランショの40年代のテクストを解釈の手がかりに用いつつ、言語化不可能なもの(「実存」あるいは「死」とも重ねられる)を言語化するための方法論をめぐる両者の鞘当てが、「文学」、あるいは「文学と行動」に対する理解をめぐっていかに展開されるのかを検討した。この過程では、サルトルによるブルトン批判を精査し、他方でのバタイユによるブルトン擁護と比較対照する作業も行った。 レヴィナス関連では、前年度に実施したバタイユとレヴィナスのプルースト論の比較を出発点として、両者におけるエロティシズム/エロスの主題と文学の主題の連関を探るべく、テクスト読解を進めた。両者の近接性が色濃く浮かび上がる一方、レヴィナスにおける文学のある種の断念と、哲学的方法論への傾斜という経過をいっそう重点的に検討する必要性が明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の成果をより豊かなものとするべく、サルトル、レヴィナスとも、調査対象とするテクストを拡充するなかで、Covid-19の世界的蔓延による渡航制限を受け、フランス本国での文献収集・文献調査を実施できなかったために、研究を完了するに至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
フランス本国での文献収集・文献調査の実施可能性を引き続き探りながらも、社会情勢により実現しない可能性に備え、フランス国立図書館のウェブサイトを通じた資料請求など、代替手段の活用を積極的に行う。サルトル、レヴィナスとも、本研究の主題に関わる重要な研究書が新たに公刊されており、その成果を取り入れて研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度にフランスに渡航し、現地で文献収集・文献調査を行う計画であったため、そのための旅費と書籍購入費、複写費等を予算計上していたが、Covid-19の世界的蔓延による渡航制限のためにこの出張が果たせず、結果として次年度使用額が生じた。フランスへの渡航は当面実現の見通しが立たないことから、フランス国立図書館のウェブサイトを通じた資料請求や、現地書店への図書発注にかかる費用に、本予算を積極的に充てていく。
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