研究課題
研究活動スタート支援
本研究は、戦後フランスの哲学教育論の展開を「哲学教師」という観点から思想史的に明らかにすることを目的とするものである。具体的には、まず、1960-1970年代のフランスにおいて「哲学教師」というテーマをめぐっていかなる議論がなされてきたのか、それがGREPHにはじまるデリダの教師論やGREPHとは別の潮流に属する教師論とどのような関係にあるのかを検討した。それにより、デリダの教師論の背景、そしてこの時期のフランスにおける議論の連続性を示すことができた。
哲学・思想史
本研究成果の意義は、これまで近代的な大学モデルの乗り越えという文脈で語られることの多かったデリダの哲学教育論を「哲学教師」という視点から考察することで、彼の教育論を1960年代にはじまる哲学教師論の系譜に位置づけ、この時期の思想家が教師と政治、権力、学校制度の関係性という主題を共有していたことを明らかにした点にある。これら一連の議論は「教育と政治」を哲学教育の視点から問題にしたものであるという点で、現代において前景化している「知と政治」の問題を問い直す手がかりになることが期待される。