本研究は、1948年から1970年代を対象に、旧優生保護法のもとで実施された流産・中絶胎児の収集・保存をとりあげ、同法下の中絶について調査することでその実態を浮かび上がらせ、膨大な数の標本作製を可能にした構造を歴史的に明らかにする。そのために、優生保護法のもとで蒐集された中絶胎児の標本コレクションについて、蒐集経緯、成り立ち、蒐集ネットワークのありようを研究倫理の観点から検討するものである。2021年度の研究経過は以下である。 1. 資料収集・分析:2019年10月に日本医師会医学図書館で複写した1948年から1970年までの資料『母性保護醫報』と古書店で入手した『母性保護醫報』の分析を進めた。さらに、医療機器の企業から送ってもらった一次資料の分析を進めた。 2. 報告:1の資料分析の成果にもとづき、拡張掻爬術と胎芽・胎児蒐集の関係がどのようなものかという観点から、再生医療ELSI研究会で報告した。タイトルは、「中絶胎児のその後:「京都コレクション」と再生医療研究」である。 3. 論文執筆(投稿前):中絶技術と社会の関係を分析した「人工妊娠中絶の技術をめぐる政治:拡張掻爬術と吸引法の技術史」を執筆し、「医史学雑誌」に投稿する予定である。
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