日本には「京都コレクション」と呼ばれる流産・中絶胎児の標本がある。旧優生保護法にもとづき、1960-70年代に収集された流産・中絶胎児は、約45,000例におよび、世界最大規模である。本研究は、旧優生保護法のもとで実施された人工妊娠中絶に注目し、胎芽・胎児の標本が作製された文脈や背景および状況に即して歴史的に検討した。本研究の成果は、①小説、手記、医学論文など資料を分析し、1960年代日本の障害者の眼差しを明らかにしたこと、②流産および中絶胎芽・胎児の蒐集ネットワークに注目し、関係者への聞き取りを実施したこと、③旧優生保護法下の産科医の中絶技術と標本蒐集の相関を示したことである。
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