研究課題/領域番号 |
19K23032
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研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館 |
研究代表者 |
増田 政史 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, 学芸研究部, 研究員 (50847134)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2022-03-31
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キーワード | 鎌倉時代 / 文殊菩薩 / 仏像 / 南都 |
研究実績の概要 |
本研究は、鎌倉時代の文殊菩薩信仰のうち、主に鎌倉時代後期に叡尊やその弟子たちによって押し進められた西大寺系文殊信仰を主な研究対象としている。今年度はその前提として、鎌倉時代前期以降に作例が増え始める、文殊菩薩五尊像の中国からの受容と日本における発展について研究を進めている。 文殊菩薩五尊像に代表される、文殊菩薩を中心とした群像形式について、中国では主に唐~宋時代以降に作例が認められる。日本においてはこのような群像形式の作例が平安時代中期から後期に見られはじめ、とくに鎌倉時代前期以降に多くなる。今年度の研究では、中国からの受容のありようを改めて整理した。また鎌倉時代以降の作例のなかにあって、奈良・安倍文殊院の文殊菩薩五尊像は建仁三年(1203)から承久二年(1220)にかけて仏師・快慶が造像したことで知られる大作である。この安倍文殊院像は、鎌倉時代後期の西大寺系の文殊菩薩像、とくに西大寺に現存する文殊菩薩五尊像(正安4年(1302)作)の規範になったものと想定される。安倍文殊院像から西大寺像へとつながる発展のありようについて検討を行なった。 従来の研究においては、鎌倉時代前期の文殊菩薩群像の受容と、後期の西大寺系文殊信仰との関係について指摘はされるものの、具体的な考察はあまりなされてこなかった。今年度の研究により、文殊菩薩群像の受容と発展の検討を通じて、鎌倉時代全体における文殊信仰というより広い視点からの考察を行なうことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は、新型コロナウイルスの影響のため、計画当初に予定していた実地での作品調査の実施が保留となっている。ただし、文献史料の点検や先行研究の再検討などを行ない、可能な限り研究を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、文献史料の精査・精読を実施し、新型コロナウイルスの完全状況を鑑みつつ、可能な限り作例の実地調査を実施していく。また、本研究の成果は論文の公刊などで発表する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究において、研究目的に関する重要作例の実地調査を計画していた。しかし、新型コロナウイルスの感染状況を鑑み、昨年度中に実施することが出来なかった。調査は可能な限り今年度に実施する予定である。それに伴い、調査のために必要な機具・機材の購入、旅費などの費用が必要になる。そのため、当該補助事業の延長および当該助成金の請求をするものである。
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