研究課題/領域番号 |
19K23034
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
渡部 直也 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教 (30846671)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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キーワード | 言語学 / スラヴ語学 / 音韻論 |
研究実績の概要 |
ロシア語・チェコ語・ポーランド語における音韻現象について、数量的および理論的考察を行った。 ロシア語については、最新の外来語辞典からデータ収集し、母音[e]の直前における子音の軟子音化(口蓋化)の起こり方を考察した。その結果、従来軟子音化が回避できないとされた軟口蓋子音について、これまでの調査に引き続き、軟子音化回避の事例が増加していることがわかった。また、借用元の母音の質の影響も考察し、特に英語の広母音に由来する場合、ロシア語本来の[e]と区別される傾向が確認された。 チェコ語については、借用語における母音交替について、質的変化が回避される一方で、長さの変化は生じる傾向がわかった。特に動詞の派生については、無意味語を用いたパイロット調査を行ったところ、本来語と同様の短母音化が一定程度観察された。日本語の事例とも比較することで、母音の質などの分節音レヴェルにおける性質は本来の音韻的傾向と異なる一方で、母音の長さやアクセントといった韻律的性質は、当該語本来の音韻的傾向に従うと結論付けた。 ポーランド語については、閉音節における母音/o/が[u]に交替する現象について、辞典のデータから後続子音の質による影響を確認し、有声子音の直前で起こりやすいことが数量的に明らかとなった。一方で音声的に有声である鼻音の直前で同交替現象が完全に回避される点について、鼻音化した狭母音の回避が関係していることを指摘した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
チェコ語母語話者を対象とした調査を計画したが、協力者の募集が予定より大幅に遅れている。 また、チェコ語・ポーランド語・ブルガリア語について現地での文献収集を予定していたが、当初より大幅に遅れたのに加え、新型コロナウイルスの影響で渡航が中止となり、全く進んでいない状況である。
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今後の研究の推進方策 |
現在新型コロナウイルスの影響で現地調査が不可能であることから、インターネットを通じて収集できる言語データや資料を基に、研究を進める予定である。 成果発表についても、多くの学会が中止となっていることから、当面の間は論文執筆に集中し、年度の終わりに学会発表を計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響で現地調査や学会が中止となったため、年度内に予算を使うことができなかった。 現時点では事態の収束後に調査を行うことを計画している。また、成果発表についても現在開催予定の学会に応募する予定である。
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