研究課題/領域番号 |
19K23039
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
稲葉 瑛志 三重大学, 人文学部, 特任講師(教育担当) (10848980)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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キーワード | エルンスト・ユンガー / 思想史 / ドイツ文学 / 保守革命 / 政治神学 / 黙示録 |
研究実績の概要 |
本研究課題「ヴァイマル期E・ユンガーの黙示録の思想――保守革命の「政治神学」の思想を背景として」について、2019年度は、三点の研究成果をあげたのでその概要を以下のように報告する。 まず、エルンスト・ユンガーの1920年代の政治思想と政治神学との関係について、彼のヴァイマル期の政治文書を手がかりに解明した。その研究成果は、日本ヘルダー学会2019年度春季研究発表会(於立教大学)において、口頭発表「エルンスト・ユンガーと政治神学――ヴァイマル期の政治文書を手がかりに」として示した。 さらに、1920年代の黙示録の思想史を、ユンガー、メラー、シュペングラーなどの保守革命の思想家たちのテクスト読解を通じて分析した。この研究では保守革命と保守主義の思想的連続性についても明らかにした。その研究成果は、論文「保守革命と黙示録――「没落」の不安と「ライヒ」の勃興」、『社会システム研究』、京都大学大学院人間・環境学研究科社会システム研究刊行会、第23号、1-21頁、として示した。 最後に、20年代ユンガーの政治思想における革命的黙示録の言説の分析を試みた。ここではユンガーの政治思想と、アナーキズムや政治神学の思想との比較検討を行い、これらの間にみられる共通性と差異を分析した。そしてユンガーとナチズムとの思想的距離も明らかにした。その研究成果は、2020年3月25日に京都大学大学院人間・環境学研究科に提出された博士論文の第二章「ユンガーの新しいナショナリズム――政治神学とアナーキズムの狭間で」54-75頁、として示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ユンガーの黙示録の思想を解明することを目的としていたが、それにかんする研究成果として論文二本、研究発表一本を成果として示した。以上の成果のみならず、本研究とかかわるRolf Peter Sieferle: Die konservative Revolution, 1995の翻訳作業も進めている。 以上のことから本研究課題一年目としては十分な進展があったといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究としては、2020年度が最終年となるこの研究課題をさらに深化することを目的とする。 具体的な目標としては、まず、1920年代のユンガーと権威の問題を彼の文学作品"In Stahlgewittern"をとりあげて分析し論文に仕上げる。その研究については現在、『ドイツ文学』160号の論文として査読を通過して、最終修正の段階にある。 さらに、1920年代ユンガーと黙示録の思想の関係については、第45回社会思想史学会大会にて口頭発表を予定している。 最後に、終末論的技術をテーマに戦間期ドイツの文学・思想を分析することを今後の課題として、これに向けた資料収集の準備をする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
ドイツのマールバッハにおける近代文学資料館にて資料収集を予定していたが、今年度はCOVID-19の影響により渡航不可能となった。そのため次年度使用額が生じた。 今年度がどのようになるのかはわからないが、資料収集の渡航を使用計画に含めている。また、国内で入手できる研究に必要な資料、そして老朽化したスキャナーやパソコン機器類を新たに購入することも計画している。
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