研究課題/領域番号 |
19K23040
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
岡村 弘樹 京都大学, 文学研究科, 助教 (90848110)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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キーワード | 文法史 / 一段活用 / 二段活用の一段化 / 四段動詞の下二段化 / 動詞の自他 / 抄物 |
研究実績の概要 |
本研究は古典語動詞を対象とし、奈良時代における一段活用の実態解明と、鎌倉時代から室町時代における「二段活用の一段化」進行状況の把握を主たる目的とするものである。 前者について本年度は、ミ語法に関連するものを中心として資料を収集し、研究を進めた。本年度刊行された論文「上代における自他対応と上二段活用」は、直接上一段活用を扱ったものではないが、上代における動詞の活用に関する考察を深めたという点において重要なものである。 後者について、本年度は『玉塵抄』を対象として調査を進め、調査から得られたデータや考察に基づき口頭発表をした。調査対象に『玉塵抄』を選んだのは、①本資料が当時の口語を反映した抄物であること、②全55巻と極めて大部であって十分なデータが得られると期待されること、③諸本が3種伝わっていて本文が不確かなところや誤写の有無が確認しやすいこと、といった点による。『玉塵抄』全巻にわたっての調査は完了していないが、「二段活用の一段化」に関連して既に一つの見通しを得ている。中世における「二段活用の一段化」についてはこれまで、ア・ハ・ワ行下二段動詞のヤ行化が強く影響したとする説が主流であった。しかし、現在『玉塵抄』の調査から得られているデータによると、ヤ行化する動詞の一段化はあまり確認されず、むしろ「読ム」→「読ムル」のような四段動詞が下二(一)段化した動詞の一段化傾向が顕著に見られた。この四段動詞の下二(一)段化は動詞の自他と関連の深い現象であり、上述した本年度刊行の論文とも関わってくるものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
奈良時代における動詞の活用に関する研究は、論文を刊行しており、かつ更なる検討を収拾した資料に基づき進められている。 中世における「二段活用の一段化」に関する研究は、『玉塵抄』の全巻にわたる調査は完了していないものの、既に得られたデータから一つの見通しが得られており、それに基づく口頭発表をした。 以上の進捗は、概ね当初の予定通りである。
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今後の研究の推進方策 |
奈良時代における一段活用に関連するものとして、ミ語法に関する成果の公表を目指す。 中世の「二段活用の一段化」に関連するものとして、『玉塵抄』やその他資料の調査を継続しつつ、「二段活用の一段化」と四段動詞の下二(一)段化との関係について考察を深め、その成果の公表を目指す。
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