本研究は、第二次世界大戦後に日本へ引揚げた人々によって書かれた文学作品を分析することにより、近年浮上してきつつある重要なテーマである「引揚げ文学」の研究に貢献した。様々な引揚げ体験をもつ書き手たちの作品を精査することにより、引揚げの描かれ方が、それぞれの引揚げ体験だけでなく、地域、性別、年齢、階級、そしてアイデンティティによってどのように異なっているかを明らかにした。多言語的なアプローチを採用することにより、日本語の引揚げ文学を国際的文脈のうちに位置づけその重要性を明らかにした点は、本研究のとりわけ顕著な功績である。
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