研究課題/領域番号 |
19K23045
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研究機関 | 愛知県立大学 |
研究代表者 |
瀧内 陽 愛知県立大学, 外国語学部, 講師 (00846701)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2022-03-31
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キーワード | イギリス児童文学 / 労働者階級文学 / 翻訳 / 受容研究 / 比較研究 |
研究実績の概要 |
本研究では、イギリスの労働者階級出身児童文学作家ロバート・ウェストールの作品について、日本という異なる文化圏での翻訳・受容を分析すること、そこから、日英それぞれの児童文学の特質を明らかにすることを目的としている。 当初の計画では翻訳・受容についての論文を1つまとめる予定だったが、研究が進んだ結果、本研究の成果はウェストール作品の翻訳と受容の二つの部分に分けて発表した方が良いと判断し、最終的に論文を2本発表することを目標に研究を進めている。受容研究については、当初の研究計画では労働者階級に注目して分析する予定だったが、研究を進めた結果、ウェストール作品の日本での受容を考えるためには、日英の児童文学史における戦争を描いた児童文学と戦争観の違いに注目した研究を先に行う必要があることがわかったので、戦争に注目した受容の比較研究を進めている。ウェストールの第1作『“機関銃要塞”の少年たち』の日英における受容についての研究成果は2020年10月24日にオンライン開催された英語圏児童文学会第50回研究大会で口頭発表した。また、2021年3月にオンラインで、この作品の出版に関わりイギリスでの作品受容をよく知るイギリス在住の批評家へインタビューを行った。翻訳に関しては、ウェストール作品の中でも北東イングランドを舞台にしている作品群に注目し労働者階級文化と結びつく北東イングランド方言が日本でどのように翻訳されているかの分析を行い、研究発表のための準備を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初の研究計画を修正・発展させた影響も少しあるが、なにより新型コロナウイルス感染症流行の影響により研究に遅れが生じている。2020年度はイギリスのニューカッスルにある国立児童文学センターとロンドンの大英図書館等での資料調査収集および東京の国際子ども図書館での調査等を計画していたがすべて見合わせた。予定していた学会発表も中止となる等、新型コロナウイルスにより広範な影響が出た。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルスの影響は2021年度も続くことが予想され、特に海外での調査は当面難しい状況が続くと予想される。そのため、文献の購入・複写の依頼等で可能な限りの資料を集めて研究を進め、研究成果の発表を目指す。『“機関銃要塞”の少年たち』の日英における受容に関しては2021年度中に英語論文を作成する。北東イングランドを舞台にしたウェストール作品の翻訳については、2021年3月に応募した査読に通ったため国際学会でのオンライン発表を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス流行の影響により、予定していた国内外の出張を2020年度に一切行うことができなかった。また、その結果、英語論文執筆が遅れているため、予定した英語論文校正費用も2020年度には支出することがなかった。 この残額は2021年度に、英語論文および口頭発表用原稿の英文校正費用、新型コロナウイルスの流行が収まれば調査旅行、収束しそうにない場合は、資料文献の購入、取り寄せ・複写費用等にあてる。
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