本研究では、「将兵という読者」がいかなる読者であったのかを実証的に明らかにし、東アジアにおける文学状況・読書行為の歴史のなかに位置づけることを目的とし、そのために、読者としての将兵のために製作された慰問雑誌に関する調査・分析をおこなってきた。その結果、「兵隊という読者」が、軍部からは具体的に統制すべき読者として、さらに世界へと仮想的に喧伝すべき読者として構想される二面性を持っていたこと、そして銃後においては、地方版ではより具体的に顔を見える読者としての兵士がまなざされていたことを明らかにした。これら複雑な読者としての兵士をめぐる作品内容の分析を今後の課題としたい。
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