研究課題/領域番号 |
19K23051
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研究機関 | 明治学院大学 |
研究代表者 |
鈴木 和彦 明治学院大学, 文学部, 講師 (90846015)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | ロマン主義 |
研究実績の概要 |
本研究は19世紀前半のフランスの文学者たちが18世紀文学をどのように理解していたのかを明らかにすることを目的としている。本研究の性質上、日本国内からでは閲覧できない資料が多く存在するが、昨年度同様、本年度も新型コロナウイルスの影響で予定していた海外調査を行なうことができなかったため、フランス国立図書館のデジタル・アーカイヴGallica等を利用しながら資料調査を継続した。
具体的な研究内容としては、昨年度に行った19世紀前半の文学史に関する言説の調査をもとに、今年度は古典派の批評家デジレ・ニザールのロマン主義観を中心的に検討した。とりわけニザールがその初期の著作『頽廃期のラテン詩人の風俗および批評研究』において企図した「ロマン主義批判」と「古典主義再生」の要諦を明らかにすることを目指した。同書はフランス・ロマン主義文学とりわけロマン派の詩法についての理解を刷新する可能性を秘めた文献であるにもかかわらず、今日まで十分に研究されてきたとは言い難い。ニザールの初期批評に焦点を当てた本研究は、19世紀以前と以後における詩的表現の変遷を明らかにするという重要な意義を持つものである。
また昨年度同様、本年度も国内で開催されているロマン主義研究会に複数回参加した。研究会では、国内の19世紀文学研究者たちと、ネルヴァルやボードレールをはじめとするフランス・ロマン主義の作家についての議論を行なった。また、8月8日に行われた同研究会にて研究発表を行った(発表題目「1830年代の反ロマン主義ーデジレ・ニザール『頽廃期のラテン詩人の風俗および批評研究』から」)。ロマン主義文学を研究対象とする研究者たちとの意見交換はきわめて有益な機会となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルスの影響で、8月と2月に予定していた海外調査を行うことができず、資料調査の方法および調査結果の発表スケジュールを見直す必要が生じたため。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究によって19世紀の批評家デジレ・ニザールのロマン主義観を明らかにすることができたので、今後はニザールの『フランス文学史』を研究対象とすることで、19世紀以前の文学に対する立場を明らかにすることを目指す。新型コロナウイルスの影響で、本年度も海外渡航が困難な可能性があるため、研究発表の場を国内に変更する必要があると思われる。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は新型コロナウイルスの影響で8月と2月に予定していた海外渡航を行なうことができなかったため当該助成金が発生した。次年度も海外渡航は困難であると思われる場合は、当初計画していた旅費を物品費として使用する予定である。
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