研究実績の概要 |
研究初年度である2019年度は、「法と文学」理論の基礎的文献を調査する一方で、戦争裁判を描いた文学作品をリスト化することに専念した。なかでも重要な作品を選び、個別作品の分析を行った。その成果としては、まず、上半期に共編者および分担執筆(東京裁判を描いた文学と検閲に関する議論)としてかかわった著作の刊行が挙げられる(金 ヨンロン, 尾崎 名津子, 十重田 裕一編『「言論統制」の近代を問いなおす : 検閲が文学と出版にもたらしたもの』花鳥社、2019年)。他にも、研究成果の発表を積極的に発信しようと試み、合計4回の国際学会での研究発表を行った。また、戦争裁判と文学に関する短い記事も発表した。2020年1月から3月までは、客員研究員としてハワイ大学マノア校に滞在し、東京裁判研究で著名な研究者であるYuma Totani教授から随時コメントをもらいながら議論を進めることができた。その成果は、同大学の日本センターの公開セミナーで発表することができ、聴衆から多くの有意義なコメントをもらった。2020年2月には、早稲田大学SGU国際日本学拠点で企画した松本清張国際シンポジウム(米国・UCLAにて開催)に参加し、東京裁判を描いた松本清張の作品『砂の審廷』について研究発表を行った。以上のような研究成果の発信を通して、世界中の同分野の研究者と活発な議論を重ねることができ、次年度に実行する研究内容をより具体化することができた。
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