本研究は、戦争裁判と文学の関係を明らかにすることを目的としており、今年度は、とりわけBC級戦争裁判を描いた文学に重点を置いて研究を進めた。BC級裁判で取り上げられた戦争犯罪の中で、最も注目されていたのは、捕虜に対する残虐行為であった。捕虜への待遇や国際法の理解を、文学作品がどう描いたのかを考察する第一歩として、2021年12月19日にシンポジウム『日本文学から考えるPOW・国際法・レイシズム』を開催することができた。この研究は、新たな研究課題(課題番号21K12929)としても今後さらに深める予定である。 一方で、継続する課題として、戦争責任や戦時性暴力といった問題を女性文学の観点から考える研究発表も二回行った。(「現代韓国の女性文学における歴史/法の担い手たち-李琴峰『彼岸花が咲く島』に触発されて-」 (『研究会:現代女性文学における法・制度への眼差し』)同志社大学烏丸キャンパス、 2021年9月6日 および、「沈黙を記載した現代史――キム・スム『聞き取りの時間』(2021)を中心に――【パネル名: 東アジアのグローカル文化とフェミニズム ゼロ年代からイチゼロ年代の日本語文学・東アジア文学を再読する】」(『第9回 東アジアと同時代日本語文学フォーラム』) 2021年10月16日)。コロナウィルスの状況により当初予定していた海外の出張は控えざるを得なかったが、国内の資料を調査し、戦争裁判を描いた文学作品のリストを充実化することもできた。
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