本研究は、中国大衆文化でよく知られる薛家将故事について、時系列の流れに従った縦に連なる発展を重要視する従来の研究視点から離れ、清代各メディアにおける故事内容の膨張、変容を共時的な文学現象としてとらえてその諸点に視座を据えた上で、従来の家将故事研究では研究対象として顧みられることのなかった清代の薛家将故事テキストの読解と分析に真正面から取り組み、薛家将故事がいかに膨張したか、いかに変容したかという点について考察を加え、その背景にある時代性や小説の生成方法、出版文化の有様を浮かび上がらせ、清代の物語創作の一側面を解明しようとした点に意義がある。
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