本研究は、敦煌文献の中でも仏教講釈文献と儀礼文書中の文学文献の利用を明らかにした研究である。敦煌文献は、9、10世紀の写本を多く残すが、中国の古典文献は多くが版本によって伝承されてきたため、写本研究は十分に行われていない。4点の写本を残す「祇園因由記」は、『維摩経』の講釈と関わりも深いが、各写本の内容には相互に一致しない面がある。この問題について、写本研究により、利用の場に応じて内容が書き換えられていることが明らかとなった。また、『維摩経』の講経文では、3点の写本を通して、書写過程や利用の場から、写本そのものの利用状況と仏教儀礼における利用状況について、大英図書館の調査を通して明らかにした。
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