研究課題
当該年度では,まず,MSB予測を用いて大容量かつ可逆性を保証する,暗号化画像に対する可逆情報埋込み法(RDH-EI法)を開発した.この手法では,埋込み情報と暗号化された画像に対して可逆性を保持するためのマーカとフラグをそれぞれ設定する.さらに,MSB予測において,その条件を整理し正確に与えることで十分な可逆性を保証する.実験を通して,本手法の可逆性を確認するとともに,埋込み容量について評価を行い,十分な可逆性を保証できない従来法と比較しても,埋込み容量は同等以上であることを確認した.次に,上記の手法におけるMSB予測について,線形回帰を導入することで埋込み容量を向上させるアルゴリズムを開発した.これにより,予測誤差の発生を抑制することができ,全体の埋込み容量が増加する.また,画素単位で埋込み可能領域を決定することで,この領域が増加し,埋込み容量の増加に繋がる.さらに,本アルゴリズムは,画像ごとにフラグ長を任意に選択可能であり,最適なフラグ長を用いて埋込み容量をより向上させることが可能となった.さらに,昨年度の成果に対して,上述のMSB予測を用いたRDH-EI法を導入することで,暗号化処理後の圧縮効率と埋込み容量を考慮した手法に拡張した.この手法では,まず,原画像を二つの領域に分類する.一方の領域に対しては,Encryption-then-compression(EtC)システムにより暗号化を施し,ヒストグラム移動を用いて情報を埋め込む.これにより,この領域は,暗号化後も圧縮が有効となり,また,埋込み情報を抽出することなく,暗号解除が可能となる.もう一方の領域に対しては,MSB予測を用いた手法を導入することで高い埋込み容量を達成できる.このように,本研究で開発した二つの技術を融合し,RDH-EI法において出力画像の圧縮効率と埋込み容量を柔軟に制御可能となった.
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IEICE Transactions on Fundamentals of Electronics, Communications and Computer Sciences
巻: E103.A ページ: 1579~1588
10.1587/transfun.2020SMP0029