2020年度は、津島佑子の90年代の諸作品の分析を行ない、世界文学的な広がりを持った後期作品へと発展していく必然性を探った。しかし、コロナウイルスの感染拡大にともない、調査、研究会などに支障をきたすとともに、オンライン授業の準備にも時間を割かれ、当初予定したほどには研究を進めることができなかった。 2020年度の前半には、戦後文化に関する論集に、「ポストリブの時代における「母性」の問題――津島佑子「伏姫」を手がかりに」を提出した。出版社の事情で刊行が遅れているものの、2021年度には刊行の予定である。また、後半には、『風よ、空駆ける風よ』を憑在論の観点から論じた原稿を国際学会に向けて準備した。こちらも、感染状況を鑑み、中止となったが、2021年度秋に延期開催の予定である。その他、この時期に発表された作品についても、論文を準備中である。 津島佑子と直接の関わりはないが、本研究で得られた知見を活かしつつ、研究発表を行なうとともに、論文を発表した。 2020年10月28日には、韓国仁川大学主催のポストヒューマニズムをめぐる国際シンポジウム(オンライン開催)で、「人間を問い直す ――日本の戦後文学と震災後文学における動物の主題を繋いで」を発表した。 2020年10月には、紅野謙介・内藤千珠子・成田龍一編『「戦後文学」の現在形』(平凡社)に、「武田泰淳「蝮のすえ」」、「深沢七郎「楢山節考」」、「コラム「大江健三郎」」を発表した。2021年3月には、木村朗子・アンヌ・バヤール=坂井編『世界文学としての〈震災後文学〉』(明石書店)に、「生産的でない未来のために――小林エリカ「トリニティ、トリニティ、トリニティ」における震災とオリンピック」を発表した。
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