研究課題
研究活動スタート支援
顕在的な冠詞を持たない言語における名詞句についてはその統語構造に関して現在でも様々に議論があり,その解明は理論言語学上における大きな未解決の問題の一つであるといえる.本研究課題では,この問題に対して,冠詞のない言語としてロシア語を取り上げ,名詞句の統語構造と定性・特定性の意味解釈の関係,および周辺の諸現象に関して検討することで,問題の一部に解答を与えた.
言語学,ロシア語学
本研究課題では,ロシア語における数詞と所有代名詞を共に含む句における定性の解釈,存在文における定性制約,目的語の否定属格現象,文内での要素の配列(語順)といった現象をもとに,しばしば先行研究で指摘されている定性・特定性の名詞句への実現のために限定詞句が必要であるという主張を否定することとなった.さらに検討を加えるべきことは多く残っているものの,言語学上の一つの未解決の問題となっている冠詞を持たない言語における名詞句の統語構造の解明に関して一定の寄与ができたものと思われる.