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2020 年度 実績報告書

13世紀アラスの演劇:中世都市共同体における演劇の成立とその機能について

研究課題

研究課題/領域番号 19K23079
研究機関大阪市立大学

研究代表者

片山 幹生  大阪市立大学, 大学院文学研究科, 研究員 (50318739)

研究期間 (年度) 2019-08-30 – 2021-03-31
キーワード中世 / 演劇 / フランス / アラス
研究実績の概要

2020年8月19日に岸井大輔企画の講演会で、「中世演劇は存在するのか?─《遊び(jeu / play)》としての中世フランス演劇」と題する研究発表を行った。この発表では「遊び」《jeu》という語彙をキ-ワードに、中世演劇は本質的に共同体のメンバーのための、共同体のメンバーによるローカルな演劇活動であったことを論証した。《jeu》は中世フランス語で、複数の人物によって演じられる演劇ジャンルを示す。ジャンル名称としての《jeu》は、演劇の遊戯的側面のみならず、集団的側面を強調するものになっている。ジャンル名称としての《jeu》の初期の用例のほとんどは、13世紀アラス出身の詩人たちの演劇作品に関わるものであり、当時の演劇上演と都市共同体の祝祭との結びつきを示している。この発表では遊戯性と共同体性を切り口に、近代以降の演劇とは異なる中世演劇のありかたを示すことで、「演劇とはなにか」という根源的な問いに迫った。
同年10月31日には日仏演劇協会が主催するレクチャーで『西欧演劇のあけぼの─中世典礼劇のドラマトゥルギーと音楽』というタイトルの発表を行った。この発表では初期典礼劇の原型となる対話体トロプスのテクストとそのテクストにつけられた音楽の分析を通して、典礼における言葉と音楽、身振りを土台とする典礼劇が、修道院や教会の聖職者によって、聖職者のために上演されていたある種の共同体演劇であることを論証した。
2021年3月に刊行された『ETUDES FRANCAISES』には、論文「タイトルに見る『葉陰の劇』の重層性」を寄稿した。この論文ではアダン・ド・ラ・アル作『葉陰の劇』を記録する写本にある二つのタイトルが持ちうる意味を調査し、この二つのタイトルはその多義性によって作中に散りばめられた多様なモチーフをあまねく伝えるものになっていることを論証した。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 2件)

  • [雑誌論文] タイトルに見る『葉陰の劇』の重層性2021

    • 著者名/発表者名
      片山幹生
    • 雑誌名

      Etudes francaises

      巻: 28 ページ: -

    • 査読あり
  • [学会発表] 中世演劇は存在するのか? ─「遊び(jeu / play)」としての中世フランス演劇─2020

    • 著者名/発表者名
      片山幹生
    • 学会等名
      岸井大輔企画PLAY
    • 招待講演
  • [学会発表] 西欧演劇のあけぼの─中世典礼劇のドラマトゥルギーと音楽について2020

    • 著者名/発表者名
      片山幹生
    • 学会等名
      日仏演劇協会オンライン演劇講座
    • 招待講演
  • [学会発表] 学習者の「なぜ?」に答える、「なぜ?」を引き出す ―フランス語教員のための歴史文法2020

    • 著者名/発表者名
      片山幹生
    • 学会等名
      日本フランス語フランス文学会

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公開日: 2021-12-27  

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