北フランスの都市的環境の中で形成され、発展してきたフランス語演劇の特性とその社会的機能を、この時期のアラスで制作・上演された演劇作品の分析を通して明らかにした。13世紀フランス語演劇は、アラスの都市共同体の中核を形成していたブルジョワたちと彼らの庇護のもと活動していたジョングルールという職業的芸人のもとで花開いた。研究では主にアダン・ド・ラ・アルの『葉陰の劇』のタイトルの多義性に着目し、この多義性を読み解くことによって作品の背景にある都市共同体のあり方と共同体における演劇作品創造の意義を明らかにした。
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