最終年度は、日本国内での日本語母語話者の歯摩擦音についてのデータ収集および、Praatを用いた分析により、個人間での歯摩擦音の代替音素の多様性についてまとめた。またそこから得られたデータにより、歯摩擦音については個人間でさえも複数の代替音素を用いていること、その代替音素が用いられる環境がある程度決まっている環境があることが明らかになった。 一方で、当初は2020年から2021年にかけて韓国および、中国の大学にて調査を行うはずであった、調査・研究がCOVID-19の影響で行えず、そこから調査を依頼していた大学の担当者が変わるなど、次の調査先が見つからない状況が続いていたことから、国内の留学生5名を対象としてパイロットスタディとして、日本人母語話者の歯摩擦音の評価を行ってもらった。この結果、評価を行う非日本語母語話者の英語能力の差により、日本語母語話者の歯摩擦音の代替音素についての評価もかなり差があることが明らかになった。この結果については、2024年1月に行われたHawaii Internationa Conference on Education にて「A Study of Japanese Pronunciation of Dental Fricatives: How Non-Native Speakers of Japanese Perceive Them」というタイトルで、学会発表を行なった。 また、科研費の期限が迫る中、コロナ禍後に続く査証取得の関係から中国への渡航を断念し、2月には中国語母語話者が多く学ぶニュージーランドの提携校であるMassey Collegeで中国語母語話者対象の研究・調査を、3月には韓国の大学2校を訪問し研究・調査を行うことができた。この結果については、現在分析中であり、科研費は終了したが、今年中に論文、学会共に発表を行う予定である。
|