本研究の目的は、小学校英語教育における文字指導のあり方を検討すべく小学生の英語の音素認識能力に着目し、文字指導の教育的介入を取り入れた場合の音素認識能力の発達的変化について明らかにすることであった。 本研究の最終年度にあたる2021年度は、主として前年度に調査協力校で得た小学3年生から6年生までの音素認識調査の分析結果を学会等にて報告し、論文化した(in press)。また、今年度に追加で行った外国語専科教員へのインタビュー調査と小学生を対象とした質問紙調査で得たデータの分析結果を、これまでの音素認識テストの分析結果と関連づけながら考察し、論文化を進めている。主な研究実績は以下のとおりである。 まず、音素認識テストの調査結果からは、授業で利用可能な音素認識レベルを測定するためのテストを開発できることが分かった。これは複数の学年にわたって音素認識レベルを評価できることを示している。対象学年全体の音素項目の得点については、新学習指導要領実施年度の前後では類似傾向にあることが明らかになった。また、文字指導後の調査結果において、学年ごとに得点は上がる傾向が見られたが、5年生と6年生の間で得点の伸びに統計的に有意な差は認められなかった。これらの結果から、現在の小学校外国語のカリキュラムでは、学習段階に応じて音素認識能力を向上させるための内容や方法等が不十分である可能性が示唆された。しかしながら、授業観察や小学生を対象とした質問紙調査の質的分析では、音素認識能力の発達に関して肯定的な変化・変容を捉えることができた。主に外国語学習入門期においては、音素認識に焦点を当てた文字指導によって「読める」「わかる」という実感を持つことにつながっていた。
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