本研究の目的は、南琉球・多良間方言の習得に有用な学習コンテンツを作成を試みることである。これまでの研究実績について、2019年度は多良間島における学習ニーズの調査を実施し、コミュニティメンバーの意識と行動に乖離が見られる、という現状を確認した。また、危機言語に関する言説分析と、琉球語圏における継承活動の先行事例として沖永良部島の活動を取り上げ、その分析と考察を発表、加筆・訂正して論文としてまとめた。2020年度は多良間島での追加調査、また学習コンテンツの雛形の作成と島の人々への意見聴取の実施を予定していた。だが、新型コロナの影響による断続的な来島自粛要請により調査実施の目処が立たなくなってしまったため、言語継承および継承に関する先行研究の収集とその分析、また学習コンテンツの前提となる多良間島方言の文法記述の精密化に努めた。 2021年度についても、新型コロナの影響によって臨地調査の実施が極めて難しい状況が続いたため、前年度に引き続き先行研究の収集と分析を行ったほか、地域での活用を主眼とした言語学習コンテンツを作成した。同年度3月には多良間島への来訪もかない、作成した絵本を、保育園、幼稚園、小中学校といった島内の各教育機関へ寄贈した。また合わせて、多良間村教育委員会および同村立幼稚園の先生方と新たな学習コンテンツに関する打ち合わせを行うことができた。 最終年度は、ジュンク堂那覇店において、前年度に作成した言語学習コンテンツ(野原正子、山本史、下地賀代子2021『カンナマルクールクの神(カンナマルクールクぬ カム)』みる・よむ・きく 南の島ことば絵本ー多良間島ー、ひつじ書房)を含む、4冊の「島ことば絵本」の刊行イベントを実施した(みる・よむ・きく・えがく 4つの島のことばの絵本展、2022年7月11日 (月) ~8月10日 (水))。
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