研究実績の概要 |
学術界の国際化により英語での論文の重要性がますます高まっている。本研究の課題はIntroduction, Methods, Results, Discussion (IMRD)で構成された基礎医学英語論文300編(総語数約160万語)を論の展開を示す12のムーブ(move)ごとにコーパスデータを収集し、各ムーブを構成するステップ(step)と典型的な定形表現を記述し、効果的な英語論文執筆を支援することである。 これまでのコーパス研究とムーブ分析を融合した研究は、Hyland (2007)や水本等(2016)のように、ムーブに関係した語連鎖(主に4語連鎖)を記述してきた。語連鎖は頻度分析であるので、大規模コーパスの場合に大変有効である。しかし本研究で作成したコーパスは総語数約160万語であり、大規模コーパスではない。そこで本研究では、Gledhill(2000a,d)が提唱しているように、全体コーパスを分析対象のコーパスと比較した。分析対象のコーパスに特徴的なkeywordを算出し、対象コーパスの特徴を分析した。具体的には全体コーパスを参照コーパスとし、各ムーブのkeywordを解析ソフトであるCasualConc(今尾, 2019)を用いて算出した。その後、12のムーブのkeywordを品詞ごとに分類し、ムーブの特徴を明らかにした。令和元年度は、特に副詞のkeywordを含むコンコーダンスラインの解析を行いムーブに関係するステップと典型的な定形表現を明らかにすることに重点をおいた。令和元年度の学会発表としては、研究協力者である河本健(広島大学)と英語コーパス学会において、Results部分における文頭の副詞を含むステップと定形表現に関して英語で口頭発表を行った。その結果としてムーブとムーブを繋ぐ副詞の役割の振舞いに注目することは、英語論文執筆に役立つことが示唆された。
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